なんかのプロジェクトM

なんのプロジェクトかは不明です。 そして「M」はムラムラの略です。 年中ムラムラ。

ようこそいらっしゃいました。

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映画レビュー界のスラム街と言われる、しがない超個人的映画レビュー兼データベースブログです。

基本的にネタバレ無し、「無知識無教養も恐れず感じたことを正直に書く」ことを信条にしております。

たまに毒を吐きます。

細々と続けながら、ようやく500本を突破しました。

これからもマイペースに増やして行きます。



しょっちゅう映画を観てる人も、たまにしか映画を観ない人でも、

ホンの少しでも参考になれば、この上なく嬉しいです。

コメント・トラックバックも大歓迎。お気軽にドウゾ。






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映画レビュー689 『秋刀魚の味』


もう完全に愚痴なんですけどね、自分のブログなんで書きますけども。

同僚に第二子が生まれたんですね。めでたいぞと。納得ですよ。我ながら納得。

お祝いせにゃいかんぞ、ということで同僚と5000円ずつ出して商品券あげましょうと。納得ですよこれは。

彼のほうが給料多いんですけども。まあ社長の息子っつーことでね。お偉いさんだしぐうの音も出ませんよ。それは良いとしましょうよ。



でもね、彼のほうが完全にリア充じゃないですか。

若くて、そこそこイケメンで収入も多く、嫁さんがかわいいんですよ。むかつくことに。おまけに看護師だし。ナースプレイも自由自在ですよ。

こっちなんてちんこ取れそうですからね。もう。使って無くて。壊死しそうで。縫合プレイですむしろ。

生まれ出たいぞ、ってやつらは大量にいるんですが、いつも虚空に飛んでいくだけですよ。ティッシュでキャッチされて無駄死にっていう。



まあ、子どもは宝ですから、お祝い自体はいいんです。納得ですよ。くどいですが納得です。

でもね、なんで常に不幸な方からリア充の方にお金が行くの? って思うわけ。キャッシュバックないの? って。

たまには不幸な方に包んでくれてもいいじゃないですか。不幸なんだから。

「出産できないお悔やみ」とか包んでくれてもいいじゃないですか。たまに。

大した額じゃなくていいんですよ。気持ちで。

「不結婚祝い」とかさ。祝いじゃおかしいから「不結婚香典」でもいいですよ。「今年もご結婚できずにご愁傷様でした」って。

毎年じゃアレだから4年に1回とかでもいいですよ。不幸オリンピックでさ。

お金もらえるなら不吉でもなんでも良いですよ。半笑いで渡されても我慢しますよ。実際人生お通夜モードだしね?

もうちょっと不リア充な人たちに対する優しさがあっていいんじゃないの、と思うわけです。世の中に。

商品券にピンクチラシでも混ぜといてやろうかちくしょう!!



ということで愚痴タイムも終わり、本日はこちら。

これまた古い邦画で奇しくも「ニッポン無責任時代」と同じ年の映画ですが、BS録画のフリしてNetflixで観ました。

配信終了間際だったんでね…!


秋刀魚の味
An Autumn Afternoon
監督小津安二郎
脚本野田高梧
小津安二郎
出演岩下志麻
笠智衆
佐田啓二
岡田茉莉子
中村伸郎
東野英治郎
北竜二
音楽斎藤高順
製作国日本
公開1962年7月29日 日本
上映時間86分
秋刀魚の味










【あらすじ】

妻に先立たれ、24歳の長女・路子とその弟である次男の和夫の3人と暮らすサラリーマンの周平。

親友の河合からは「そろそろ路子ちゃんも結婚したらどうなんだ?」とお見合いの話を振られるが、どうも乗り気にならず、はぐらかす毎日。

そんな中、同級生たちと集まってかつての恩師・佐久間と酒を酌み交わし、泥酔した彼を送った周平は、

恩師の家で婚期を逃し、父親の世話をする娘の姿を目にするのだった。



【総評】★★★★★★★★☆☆(★8)


淡々ゆるゆる昭和の“結婚”悲喜こもごも。


お恥ずかしながら初小津映画だったんですが、小津監督はこの映画が遺作だそうです。

小津監督が一貫して描いてきたらしい、妻に先立たれた初老の父親と今期を迎えた娘のお話。

主人公である父親役は笠智衆、娘役に当時21歳の岩下志麻。

もうね、岩下志麻がまじでビビるほどの超美人で。

瀬戸内少年野球団の時にエロスがすげーな、と思ったのは覚えてるんですが、若い頃はこんなに綺麗だったのか…! と。

ちょっと今の女優さんとはオーラが全然違う雰囲気があり、そりゃあ大女優と言われるのも納得です。



内容としてはほんとーーーーにフツーの日常を淡々と、でもちょっと軽妙に見せる形のドラマで、

別に特に事件が起きるわけでもなく、ただ「そろそろ路子ちゃんもお嫁に」なんて言われて、

お父さんも本人もその気はない…ものの次第に周りのいろいろを見ていくうちに考えも変わって、的なお話です。

主に周平の家での会話、結婚して団地住まいの長男夫婦の話、親友と同級生とかつての恩師との飲み会、

その後行きつけとなるバーのお話…辺りの何気ないやり取りがいろいろつながって物語を組み立てます。

ちなみにバーのママは周平が「妻の若い頃に雰囲気が似てる」と感じ、お気に入りのお店になっていくんですが、

そのママの役が岸田今日子で、これまた超若い。

そりゃ昔の映画なんだから若いのが当たり前なんだけど、でも岸田今日子が若い頃も初めて観ました。

この人は綺麗とかかわいいとかはあんまり無かったんですが、ただなんかエロかった。なんか。

「きっと夜は激しいでしょ?」って感じ。完全なるオッサンの発言です。



で、団地に住む周平の長男がですね、「中井貴一に似てるなーーーーーでも年代的に違うしなーーーー」とモヤモヤしながら観ていたんですが、

この方が佐田啓二だったとは…!

名前だけは知っていたんですが、中井貴一のお父さんだそうです。そりゃ似てるわけだ。



映画としては…小津映画の特徴なんでしょうが、かなり独特な雰囲気がありまして、

例えば登場人物はほぼ正面からカメラ目線で語る、っていうのを徹底してるんですよ。

「喋ります!」っていう。

「俺、喋ります!」「次は私、喋るわ!」って感じで堂々とカメラに向かってセリフを言う、という。

カメラも固定で動きがまったくないので、なんとなく舞台っぽい感じがありました。舞台観たこと無いんだけど。

そのセリフ自体も独特でですね…結構しっかり間を取って、「大丈夫なんだよ。大丈夫なんだ」「いらないわよ。いらない」みたいに

繰り返すセリフが多く、丁寧というか不思議というか。

最初はなーんか気になってしょうがなかったんですが、慣れてくると妙な味がある気がして、その雰囲気がまた良かったですね。



ホントに取り立てて何があったとか書くこともないような日常の映画なんですが、

ただ風景も価値観も人々も立ち居振る舞いも、全部がいわゆる「ザ・昭和」な内容なので、

それが懐かしくもあるし珍しくも感じられるしで、逆に今観るからこそ新鮮な面が見えて面白いんじゃないかな、と思いました。

リアルタイムで観てたらもっとつまらなく感じていたかもしれません。

でもあれかな、僕が好きなイギリス映画のように、

リアルタイムで観ていても「市井の人々の普通の日々」を描いているだけでたまらない何かがあったかもしれませんね。



その独特な雰囲気は贅沢な間の取り方にも感じられるんですが、とは言え飽きるような間延びした感じでもないし、

本当に今まで観たことのない感覚が面白い映画でした。

ゆるやかな日常の話なんだけど、無駄なシーンはまったくなかった気がする。

穏やかな外見ではあるもののすごく筋肉質な映画というか。草野仁みたいな。というわかりにくい例え。



ということで映画としては妙な魅力のある映画で味わい深く面白かったんですが、

ただ根本に流れる価値観が今とはかなり違うもので、場合によってはとんでもないセクハラだ! とか

結婚観が保守的過ぎる、とかいろいろ気になる部分はあると思うので、特に女性が観る場合はそれなりに

心構えをアジャストする必要がある気がします。

この映画で語られる価値観が良い悪いは関係なくて(実際当時は当たり前だっただけにそういう描き方はしていないです)、

「そういう時代があったんだね」と過去のものとして流す、なんならファンタジーとして観るぐらいの心構えの方がいいかもしれません。

僕自身、この映画の結婚観は同意できないものですが、ただ心情としてはすごくよくわかったし、そこがまた良かったとも思います。

まあ、これは自分が男だからっていうのが大きいのかなとも思いますが。逆に今の女性が観てどう思うのかも気になるところ。

女子的には今とはまったく違うこの時代の一般的な価値観を観て引っかかるよりも、ここまでオープンではないにせよ

いつの時代も「娘を嫁にやる父とはこういうもの」的に、自分のお父さんをちょっと身近に感じる材料として観る感覚で良いのかもしれませんね。

確実に言えるのは、そういう「昭和の古い結婚観」を語らせているのが笠智衆である、というのが良いんだろうな、ということ。

これがジャック・ニコルソンだったら反発がすごい気がする。謎の人選だけども。

あの笠智衆の飄々とした優しい佇まいで言われたらなんでも許せそうな気がします。

そう、結局は「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」が大事、という今も変わらない答えで突然の終わり。



【このシーンがいいぜ!】

散々酒を勧められては断らずに飲み続けるひょうたんの姿が最高。ほんと笑っちゃう。

あとは軍艦マーチに乗せてポーズを取らされる笠智衆がかわいすぎる。かわいい爺さん好き必見です。



【ココが○】

劇伴がほぼ1曲の使い回しだったと思いますが、ほのぼのとした優しさを醸し出してて良かったですね。

結構間が贅沢なだけに、曲が無かったら不穏な空気になってそうなシーンもあったんですよ。音楽の力大きい。

長男の奥さんが結構鬼嫁感出すシーンもあって震えたんですが、そこもかわしてむくれるかわいさがまた昭和っぽくていいのかな、と。



【ココが×】

終盤の展開が急すぎて、「そこを描きたいわけじゃない」のはわかるものの、もう少し丁寧さが欲しかったとは思いました。

まあ、この映画はあくまで父の物語であって、娘は“他人”なんでしょうね。



【MVA】

笠智衆は演技が抜群にウマイとかそういう感じは無いんですが、ただもう佇まいが唯一無二ですね。ほんとにこの人は。

癒し系っぷりが半端無い。

前も書いた気がしますが、僕が生まれる前に他界したお爺ちゃんが笠智衆に似ていたそうで、

今になってなおさら会ってみたかったなと思います。



そんな笠智衆も、シャキシャキ超美人な岩下志麻もとても良かったんですが、この映画はこの人かな〜。



東野英治郎(佐久間清太郎“ひょうたん”役)



周平のかつての恩師で、お酒大好き。でも弱い。

「かつての恩師」だけどものすごく腰が低いんですよ。ものすごく丁寧な物腰で。

で、酒を勧められると「いや、そうですかこれはこれは」って飲んじゃう、っていう。かわいい。

この人の佇まいがかなり軽さを加えていて、観やすくなっていたと思います。なんならもっと出てこい、と。




映画レビュー688『ニッポン無責任時代』


本日はBS録画より。

日曜日ちょっと遅めに起きてしまったため、「お昼ご飯は遅くしたくない!」とのご意向(おれの)を鑑み、短めの映画からチョイス。

さらに「今時この映画を取り上げる人間も珍しいでしょ」とニッチ狙いの安っぽいスケベ根性から選ばれた一作です。



ニッポン無責任時代
監督古澤憲吾
脚本田波靖男
松木ひろし
出演植木等
ハナ肇
重山規子
谷啓
中島そのみ
団令子
藤山陽子
田崎潤
由利徹
音楽神津善行
主題歌植木等
『無責任一代男』『ハイそれまでョ』
製作国日本
公開1962年7月29日 日本
上映時間86分
ニッポン無責任時代










【あらすじ】

前職をクビになり、一人バーで酒を飲む男・平均(たいらひとし)。

彼は「太平洋酒」という洋酒メーカーへの乗っ取りを画策している客の話を聞き、

持ち前の機転と図々しさで太平洋酒の社長の元へ赴いて信用を得ると、

まんまと太平洋酒総務部の社員として入社することに成功する。

その後も無責任な言動に同僚の反感を買いつつも、要領の良さで出世し、会社の買収にも負けずうまくお偉いさんに取り入っていくが…。



【総評】★★★★★★★★★☆(★9)


そうだなそのうちなんとかなるな!


無責任男の代名詞、植木等主演の大ヒット映画。

植木等を生で観ていた記憶があるのはおそらく僕ら世代が最後でしょうねぇ…。寂しい。

幼少期、TBSでやっていた「オヨビでない奴」というドラマを観ていました。ワタクシ。

植木さんすごく好きだったんですよ。文字通り好々爺、って感じで。



わからない若い人たち(読者にいるのかは不明)にご説明しておくと、植木等という人はそれはもうまさに「国民的大スター」で、

今で例えるなら…ミスター長嶋さんのような感じでしょうか。

「例えも昭和じゃねーかよ!!」という怒鳴り声が聞こえてきますが、それも仕方ないんです。物は投げないでください。

もうね、このレベルの大スターって今じゃ絶対出てこないんですよ。間違いなく。

それは今の人たちにこの頃の人たちよりも魅力がないとかいう話ではなくて、時代的にテレビが一番の娯楽で、

他の娯楽の種類も少なかったからこそえらく幅広い支持を受けるスターが生まれる土壌があった、それ故の大スターなわけです。

変に「この人好き」って言うと叩かれる、みたいなネガティブSNS的な絡みもない、大らかな時代だったこともあるでしょう。

海外でもスターシステムによって作り出された大スターほどのスペシャル感のあるスターって多分出てこないだろうし、

これはもう完全に時代の特性として登場した「今ではありえないほどの大スター」、それが植木等というお方です。



さて、その植木等と言えば「無責任男』というのが世の常識だったわけです。ミスターと言えばどうでしょう、みたいなもんです。

長嶋さんを例えに出しておいて別のミスターを出すとかどうなんだと。でもそうなんです。

そんな「無責任男」の口火を切ったのがこの「ニッポン無責任時代」ということで、

とんでもないドタバタコメディなんだろうな…と思いきや意外としっかりとしたストーリーのコメディで、ひじょーに楽しめました。



植木等演じる主人公・平均(たいらひとし)は、いわゆる普通のサラリーマン。

一人バーで飲んでいたところ、「太平洋酒」という洋酒メーカーの乗っ取り話を耳にします。

そこに偶然、その太平洋酒の社員たちが来店。

相席して「乗っ取りの話があるそうですが、私に任せてください」とテキトーなことを言って酒を飲み、

頃合いを見計らって中座…のフリをして飲み代を払わせ、一路太平洋酒の社長宅へ。

社長不在の中ズケズケと上がり込んで息子といきなり打ち解け、社長は明日葬儀に出る…という情報を聞きつけ翌日斎場へ、

社長と対面しては「私も故人にはお世話になっておりました」と取り入って相談相手に収まり、見事太平洋酒の社員として採用…

という具合にトントン拍子に事が運び、その後もいろいろありつつ持ち前の機転といい加減さと図々しさで乗り切る男の物語でございます。



キャストは植木等を始めとしたクレイジーキャッツの面々に由利徹その他というオッサン世代にはたまらないメンバーで、

もうほぼ皆さんお亡くなりになっていますが…さながら「昭和版オーシャンズ」とも言える豪華キャスト。

あと僕は知りませんでしたが「お姐ちゃんトリオ」という直球ネーミングな当時人気の女優陣が華を添えますよ、と。



植木大先生の若い頃を観るのは初めてでしたが、快活で人懐っこい笑顔に、

なんならちょっとサイコパスなんじゃねーのか的な異様さが同居するという素晴らしいキャラクター。

途中途中で歌も挟む芸達者ぶりはまさにエンターテイナーで、和製サミー・デイビス・ジュニアだなと。

いや例えも古ければサミー・デイビス・ジュニアも詳しくないんだけど。そんな感じ。

さすが昭和を代表する大スター、軽快な演技ながらその凄さに舌を巻きました。



その歌のシーンでは、

♪おぉれ〜は このよ〜でいちばんっ 無責任と言われたおとこっ

の「無責任一代男」や、

♪あぁなただ〜けが〜 い〜きがい〜なのぉ〜

の「ハイ、それまでョ」と言った、ワレワレオッサン世代には懐かしさで涙が出る名曲ばかりで最高です。

「うわー、やっぱ本家のコレはたまんねーなー」と喜びながら観ていてふと思いましたが、

これってもしかして「ジャパニーズ・ミュージカル」なんじゃないのか、と。

もちろんそんな大仕掛けでもないし、ほぼ植木大先生のワンマンショーなんですが、

それでもどことなくミュージカルを感じさせる雰囲気があってですね。そこがまた良かったな、と。



キャラクターとしても、「無責任男」と言いつつも受け答えは至極真っ当な社会人っぽさがある意味リアルでですね。

あり得ないトントン拍子っぷりではあるんですが、でもどっかで「昭和ならこういうのありそう」と思わせるギリギリさがとても良かったですね。

もっと破天荒でいい加減な話かと思っていたんですが、実際はギリギリあり得そうな世渡り上手感でうまく惹きつけてくれます。



ということで今から50年以上前の邦画ではありますが、

逆にそれだけ昔の映画だけに変に商業主義に走らずに情熱で作り上げた雰囲気もあって、文句なしに楽しめました。

いい加減ながらもたくましく、へこたれない主人公に元気をもらえて大満足。

まさに「明日は明日の風が吹く」、なるようになるさでこれからまたがんばれそうです。

はー、楽して儲けるスタイル、憧れるわー。



【このシーンがいいぜ!】

序盤の「こっちだってれっきとした出世前の身体ですよ」は名台詞。植木大先生さすがです。

そして中盤の「エロとスリルのサンドイッチじゃ身体が保たねぇ」も名台詞。由利徹先生もさすがでした。

くぅー! ザ・昭和がたまらない。



あと歌のシーンで「ふざけやがって ふざけやがって ふざけやがって コノヤロー!」のコノヤローの時にジャンプするんですが、

その意味のわからないジャンプが最高。



【ココが○】

タイトルからは「完全に無責任で周りを巻き込むクズ」的な印象があったんですが、全然そういうお話では無いのが良かったですね。

無責任ながら人を惹き付ける魅力と、クビになっても凹まないメンタルの強さに元気をもらえます。

ほんとね、悩んでる時に観るとすごく良いと思う。今の時代だからこそより良いかもしれない。



【ココが×】

特に無いかなー。上映時間の短さもとてもグッド。



【MVA】

氏家社長の息子と付き合ってる女の子が綺麗でしたねー。

「お姐ちゃんトリオ」の(この時代っぽい)野暮ったい印象とは全然違ってびっくり。

ちなみに社長の息子は峰岸徹でした。若い! でもこの方ももう故人です…。

その他皆さん良かったですが、やっぱりもうこの映画はこの人でしょう。



植木等(平均役)



軽快さ、真面目さ、歌のうまさ、全身からスターオーラがスゴイ。

時代的にジャック・レモンを観ているのに近い感覚。

大先生の他の映画も観たいなぁ。




映画レビュー687『ザ・ウォーター・ウォー』


相変わらずネトフリ公開終了前映画とBS録画を行き来しております。本日はネトフリの方。

タイトルも知らないスペイン映画でしたが、一部評判が良いようなのでちょっと観てみることにしてみました。

そしてスペイン映画的にはまたもおなじみ、ガエル・ガルシア・ベルナル主演でございます。



ザ・ウォーター・ウォー
También la lluvia
監督イシアル・ボジャイン
脚本ポール・ラバトリー
原案コチャバンバ水紛争
出演ルイス・トサール
ガエル・ガルシア・ベルナル
カラ・エレハルデ
ラウール・アレバロ
音楽アルベルト・イグレシアス
製作国アメリカ
公開2011年1月 スペイン
上映時間104分
ザ・ウォーター・ウォー










【あらすじ】

コロンブスの植民地支配とその支配に抵抗した人々の映画を撮影するため、ボリビアにやってきたスペイン人クルーたち。

エキストラと先住民役の役者を調達するため、現地でオーディションを行って撮影を開始するが、

同時に現地では水道事業の民営化による料金値上げによって生活が困窮する地元民たちの抗議活動が始まり、

その中にはオーディションで選ばれたメンバーも入っていた。



【総評】★★★★★★★★★☆(★9)


現実と劇中劇が交錯する緊張感溢れる社会派ドラマ。


もはやすっかり「スペイン語圏の社会派映画はお任せ」的なポジションに収まりました、ガエル・ガルシア・ベルナル主演の社会派ドラマ。GGB。

天国の口、終りの楽園。」で共演した、子どもの頃から友人だという

ディエゴ・ルナは着々とハリウッドの娯楽大作(直近は「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」)で

ポジションを確立していっているという違いがまた面白いですね。



今作のGGBの役どころは映画監督。

コロンブスによるスペイン植民地支配を批判的に描く映画を撮影しようと、プロデューサーのコスタ他撮影クルーを連れて南米にやってきます。

その中でも人件費が安いから、という理由でボリビアに拠点を構え、早速現地でエキストラや圧政に抵抗する先住民役のメンバーをオーディション。

撮影も快調に進む中、現地では「水道事業の民営化」により欧米企業が進出、水の料金が上がってしまうために

貧しい現地の人々は「民営化反対」の活動を始めます。

その活動の中心メンバーには、監督GGBが自ら惚れ込んだ部族長役の男・ダニエルもいて、

「せめて撮影終了までは活動を控えてくれ」と打診しますが、ダニエルは聞く耳を持たずに活動を続けます。

次第に深刻化してくる政府と抵抗活動の対立の中、果たして映画は無事完成するのか、そしてボリビアの行方は…!



という映画なんですが、これがねー。さして期待しないで観始めたこともあってか、予想以上にものすごく良い映画でした。

いやー、まいったまいった。全然こんなスゴイ映画だと思っておらず。

なんなら最終的には目頭が熱くなるぐらいの入り込みようで、しみじみと「いやぁ良い映画だなぁこれ…」と独り言を吐き出す中年の図がありましたよ。そこには。



ちなみにGGB主体にあらすじを書いてますが、主役はどちらかと言うと映画プロデューサーのコスタの方で、GGBは準主役と言った役割。

情熱と正義感がありつつも現実的な考えも持ち合わせたバランスの良い青年監督と言う感じでしょうか。

対する主役のコスタは、途中まで観てて「バカだなー」と言っちゃうほどなんというか…脇の甘いオッサンで。

「どうせこいつら英語わかんねーしワハハハハー」と調子乗って現地人ディスってたら理解されてワオ、みたいな。

少々残念な人物像なんですが、その彼が終盤に向けて次第に本来の人柄を取り戻し始め、

俗っぽく言えば「映画業界に染まった考えを溶かして一人の人間としてその場に立つ」ようになる、という人格形成的な部分もあり、

丁寧な人間ドラマとして大変良くできていたように思います。



序盤はコロンブスに搾取される現地人を“劇中劇”で描きながら、現実でも欧米企業に搾取されているボリビアの現状と結びつかせて

「結局お前らもやってること一緒じゃねーか系の話なのねフフフーン」なんて余裕ぶっこいて観ていたんですが、

ところがどっこいそんな底の浅い話でもなくてですね。

根っこの部分では確かにそういう劇中劇と現実の交錯っていうのはテーマとしてあるんですが、

その上に「今生きている人間同士」の絡みがしっかり描かれているので、そういうテーマほどお説教臭くない、っていうのが素晴らしいですね。

もうめっちゃ良い映画でしたよ。まじで。

社会派映画でありつつも、その人間関係を巧妙に利用しつつエンディングへ導くというドラマとしての物語の閉じ方が完璧で。超胸熱。

おまけにその「劇中劇と現実の交錯」が次第に境界を曖昧にしていくことで醸成される緊張感がもう…!

醸成される、とか我ながらうるせーなと思いますがそうなんですよ。ほんとに。

これは現実なのか、それとも映画の1シーンなのか…そういうギリギリの環境を描くのが抜群にうまくて。



また主役陣のみならず、劇中劇に役者として参加している脇役陣が抗議活動に不安を覚え、それぞれの思いで行動を選ぶところも

物語に奥行きを与えていて、地味ながら大事な役割を担っていたと思います。

監督とプロデューサー、そしてダニエル家族だけだったらこんなに味わい深い映画になっていなかったでしょう。



一応、この映画は実際にあった「コチャバンバ水紛争」を元にしている作品とのことで、その辺りのリアリティもまた作品に貢献しているんでしょう。

以前、日本の大きな利点の一つに「水資源が豊富な点」がある、という話を聞いてハッとしたことがあるんですが、

確かに日本からするとこういう水紛争というのは想像しにくいものがある反面、その距離感のおかげでより深刻に捉えられるテーマのような気がしました。

世界ではこういうことが起こっているという、当たり前の事実をまざまざと見せつけられる社会性が胸に染みます。

また、ただ単に「水がなくて死者が増えてます」みたいなステレオタイプな水不足話よりも、

「欧米企業の進出で水の値段が上がって困窮する」という話の方が身近でリアルに感じられる分、

よりこの映画のドラマに入り込める面もあったように思います。



そんなわけで、いろいろと試合巧者ぶりが感じられる名作と言って良いと思います。

地味な社会派映画故に人を選ぶ部分はあるでしょうが、こういう映画が好きな方は一度観てみることをオススメします。

ただスペイン映画は若干マニアックなだけに、なかなか気軽にレンタルできないのも残念なところ。

もう配信は終わっちゃいましたが、Netflixでこういう映画が観られたのは嬉しい誤算でした。



【このシーンがいいぜ!】

ラスト10分ぐらいは超が付くほど胸熱でした。めっちゃ良かった。

あと陰影際立つ夜のシーンがとても良かったです。コロンブス役のおっちゃんがプロデューサーと本読みするシーンとか。



【ココが○】

上に書いたように、ライティングがすごく良くてですね。詳しくない人間が言うのもアレですが、撮影技術的にもかなり洗練されていたのではないかと思います。

ちょっとゴッドファーザーを彷彿とさせるような。重みのある陰影が素晴らしかったですね。



【ココが×】

映画そのものに関しては特に無いです。104分と若干短めながらこれだけの味わいを作りだすのも素晴らしい。

ただ僕の評価とは別に、この映画についてはボリビア映画の「鳥の歌」の盗作ではないか、という説があるらしく、

確かに概要を見るとかなり似ているので、真偽の程はわかりませんが、そうそう手放しで褒められる映画でもないのかもしれません。

それとコチャバンバ水紛争の描写自体にもいろいろと批判的な意見があるようで、現地の人たちからすると納得がいかないものなのかもしれません。

最もその点に関しては、こうして多数の人たちの目に触れる形で論争を起こしている時点で「何もしないよりはマシ」だと思うんですけどね。僕は。



それとまたかよ的な苦言ではありますが、邦題がちょっと…。アクション映画じゃないんだからさ…。

元々は原題直訳の「雨さえも」というタイトルだったようですが、DVD化の時点で「ザ・ウォーター・ウォー」になったそうです。

「雨さえも」でよくね…。



【MVA】

GGBは相変わらずイイですね。さすがメキシコ人俳優のエース。

激太眉毛のプロデューサー役、ルイス・トサールも見事でしたが、存在感的にこの人かなと。



カラ・エレハルデ(アントン役)



劇中劇におけるコロンブス役のおハゲ。

劇中では大俳優的な存在のようで、高慢で高圧的なアル中なんですが、ただ芯のある言動がズルいかっこよさという。

良いですね。良いおハゲでした。




映画レビュー686『コンドル』


今回はBS録画より。古い映画です。

雑食がウリのなんプロです。(書くことがない時の定型文



コンドル
Three Days of the Condor
監督シドニー・ポラック
脚本ロレンツォ・センプル・ジュニア
デヴィッド・レイフィール
原作ジェームズ・グラディ
『コンドルの六日間』
出演ロバート・レッドフォード
フェイ・ダナウェイ
クリフ・ロバートソン
マックス・フォン・シドー
音楽デイヴ・グルーシン
製作国アメリカ
公開1975年9月24日 アメリカ
上映時間118分
コンドル










【あらすじ】

CIAのアナリストとして、世界各国の雑誌や書籍を解析していたコードネーム“コンドル”ことジョセフ。

ある日、お昼の買い出しからオフィスに戻ると、同僚全員が殺害されていた。

自分も殺されると思ったコンドルは本部に連絡し保護を求めるが、本部からは面識のない上司をよこすと言われ…。



【総評】★★★★★★★★☆☆(★8)


なかなか尻尾を掴ませない骨太サスペンス。


ロバート・レッドフォード主演、相手役がフェイ・ダナウェイというこの頃の映画好きにはタマランコンビの映画ですね。

監督はシドニー・ポラックということで否が応でも盛り上がるってもんですよ。

オープニングの音楽がフュージョンっぽくて時代を感じます。みんなもっとフュージョン聞こうぜ。



タイトルはまんま主人公のコードネームですが、原題的には「コンドルの3日間」と言ったところでしょうか。

主人公・コンドルが勤めるのは「アメリカ文学史協会」という本当にありそうな人畜無害っぽい団体ですが、

ここが実は「世界各国の書籍や雑誌を解析し、実際の作戦に役立てる」ことを目的としたCIAの出先機関という…

これまた本当にありそうなお話。あるんでしょうか。無いんでしょうか。わかりませんが。

主人公のコンドルは自他ともに認める「本の虫」で、「世界中のすべての本を読むのが目的」と大真面目に語ってます。無理やろ。

で、漫画が好きらしく、同僚が話していたトリックも漫画から引用する形で暴いてみせます。今ならコナンくんも読んでそう。

そんな彼が「今日は君がお昼買い出しの当番だ」ってことで買い出しに出かけている間に、アメリカ文学史協会が何者かに襲われ、

戻ってきたら全員死んでいる…というおそロシアな展開で物語はスタート。ちなみに先に言っておきますがロシアは関係ありません。



なぜ人畜無害っぽい「アメリカ文学史協会」が襲撃されたのか、犯人の目的もわからないままCIA本部に保護を求めるも、

どうもCIA本部にも何やら裏がありそうだぞ…ということでいろいろアレコレするお話です。

ちなみに途中で逃げるためにコンドルによって無理矢理事件に巻き込まれたのが、フェイ・ダナウェイ演じるキャサリン。ヒロインでございます。



概要で書いちゃってるのでぶっちゃけると、どうやらこの「アメリカ文学史協会襲撃」にはCIA内部の何者かが関わっているっぽいんですが、

ただそこを匂わせておきつつも目的は謎のまま、そして襲撃時に仕留め損ねた故にコンドルを追う殺し屋の存在も相まって、

真相に迫るまでなかなか引っ張る込み入ったサスペンスっぷりがとても面白かったです。良いサスペンスですねこれは。

スタートは“つかみ”的にショッキングな「同僚全員殺害」ではあるものの、それを除けば劇中無駄な殺し殺されもないし、

ビックリ&ガッカリな展開がまったくないのでスキがない、ひじょーに引き締まったサスペンスに仕上がっていると思います。

さすがやるなシドポラ!



ヒロイン的に巻き込まれるフェイ・ダナウェイとロバート・レッドフォードの関係も、当然ながらお決まりのようにロマンス的なアレコレではあるんですが、

しかしそれも結構サラッとしていてですね。いかにもこの時代らしいハードでボイルドな感じで。

この塩梅がまたとても良かったですね。最小限ロマンスで骨太感を和らげるさじ加減。

フェイ・ダナウェイっていうのもまたこの時代らしい人選でお見事です。ただの美女じゃない感じが。



なぜに「書籍分析官」という地味な男が執拗に狙われるのか、そして狙っている側の真意は…という謎をうまく転がしながら、

「本の虫で知識がある」主人公の使い方も見事だし、さりげない伏線の使い方もお上手。

現代的なスパイ映画からすれば地味ではありますが、サスペンスとしては今観てもなかなかよくできていると思います。

この時代の映画が好きであればぜひ。



【このシーンがいいぜ!】

終盤の「駅まで送ってもらう」ところでしょうか。渋かった。



【ココが○】

一番思ったのはやっぱり色恋のさじ加減ですかねー。

これ以上やりすぎると「いらんだろ」だし、無いなら無いで中盤の話を進めづらい&より地味になっちゃうしで、本当にいい塩梅だったと思います。



【ココが×】

ラストシーンは潔くてよかったんですが、含みをもたせたセリフからすればもう少し観たかったのが正直なところ。



【MVA】

ロバート・レッドフォードはやっぱりふとした瞬間にブラピっぽいですねぇ。

ただいつも通りの平常運転感は否めず、特に目立ってよかったというのも無かったかな、と。

フェイ・ダナウェイは今まで観た中で一番綺麗に観えました。こんな美人だったっけ? って。

やっぱり30代の美人はタマランなハァハァ。



と言いつつ今回はこちらのお方です。



マックス・フォン・シドー(殺し屋役)



やっぱりどうしても爺さんイメージの強いマックスさんですが、さすがにこの頃は若い。そして渋い。

プロフェッショナルの殺し屋ということで、ちょっとゴルゴっぽい美学が隠れ見えてそこがまたよかったです。




映画レビュー685 『ロスト・フロア』


ネトフリ配信終了間際シリーズ。

結構ネットの評価は散々だったんですが、なんとなく可能性を感じて観てみました。



ロスト・フロア
Septimo
監督パチ・アメスクア
脚本パチ・アメスクア
アレホ・フラ
出演リカルド・ダリン
ベレン・ルエダ
オズバルド・サントロ
ホルヘ・デリア
音楽ロケ・バニョス
製作国スペイン・アルゼンチン
公開2013年 スペイン
上映時間88分
ロスト・フロア










【あらすじ】

毎朝子ども2人を学校に送り届けている、妻と別居中の弁護士・セバスチャン。

その日も2人を送ろうと子どもたちを連れ、マンションの7階からエレベーターに乗ろうとしたところ、

2人が「エレベーターよりも早く階段で降りるもんね!」と勢い良く降りて行ってしまう。

しかし先に1階に着いたセバスチャンがしばらく待っていても2人は降りてこず、管理人も姿を見ていないと言う。

一体子どもたちはどこへ行ってしまったのか…。



【総評】★★★★★★☆☆☆☆(★6)


全体的には悪くないものの、決定的にダメな部分で損してる。


スペイン・アルゼンチン合作ですが、基本はスペイン映画のようです。今回は「春はSA・RA・SA・RA」は流れません。(当然

舞台はブエノスアイレスでした。確か。スペインで働いていたのが無一文になり、引っ越してきて家庭を築いた的なフリ。

「スペイン映画なのに南米舞台なのかー」と思って観てましたが、考えてみれば日本中心の世界地図だと正反対に位置しているように見えるものの、

ヨーロッパの人にとっては日本なんかよりもよっぽど近いんですよね、南米。

割とこういう舞台設定ってありがちなのかなーと思いつつ。言語的なものもあるんでしょうね。



で、主人公はリカルド・ダリン演じる弁護士、セバスチャン。

「どっかで観たことある気がするなーああ歌手の小金沢くんのスペイン版か」と勝手に納得していましたが、

途中で「人生スイッチ」に出てたな、と気付きました。「ヒーローになるために」のあの人です。

妻とは別居中ですが、子ども2人を学校に送り届けるために毎朝3人が住むマンションに来る模様。

その部屋は7階にあり、1階に降りようとエレベーター(ワクワクするぐらいえらく年季の入ったやつ)に乗ったところ、

「階段を使って先に着くか競争しよう!」と子どもらしい遊びを提案され、妻からも「階段競争は禁止」と言われていたにも関わらず流されて許可してしまい、

結果いつまで待っても降りてこない子どもたち。なんかありそうでコワイ。

最初は隠れてるんでしょ、と探し回るもまったく見当たらず、これは誘拐事件なんじゃないか…ということで

同じマンションの住民である警視他警察も巻き込んでの事件となるお話です。



これ、小さい子どもをお持ちの親御さんたちはなかなか他人事ではない怖さがあるんじゃないでしょうかねー。

僕も幼少期に母親と車で買い物に行った時、買い物待ちが退屈すぎて一人歩いて家に帰ったことがあって、

探し回りながら帰ってきた母親に泣きながらものすごい心配したんだぞと怒られたことを思い出しました。

今思えばそりゃあ怒るよなと思いますが、それはさておきちょっと目を離すといなくなるのが子どもというもの。

それがわかっているからこそ最初は「いい加減怒るぞ」と言いつつ探していたセバスチャンですが、

段々とこれは事件に巻き込まれたんじゃないか…ということで焦りを募らせていきます。わかる。

そしてそれがどんな内容なのか…は観ていただくとして、映画についてのアレコレを。



まず「子どもが消えた」という単純な事件だけに、その事件そのものよりも背景に重点を置いた作り自体は悪くなかったと思います。

それに変なファンタジーだったり変なサスペンス的なお話に持って行かなかったのも良かった。

散々引っ張っておいて「実はマンションが異空間につながっていて子どもたちは向こうの世界で殺されていた」的な

話だったら目も当てられないですからね。

好き嫌いはあるでしょうが、内容的には基本真っ当な話だったのはグッド。

演出的にもマイナー映画っぽさはまるでなく、短めの尺故かヘタに引っ張らず、

しっかりきっちり観られるテンポの良さと緊張感は思っていた以上によく出来ていたと思います。

良い意味で観やすい、間口の広いサスペンスという印象。



ただ、一点どうしても納得できない部分がとても重要な部分で登場してしまったため、「それはおかしいだろー」と一気に醒めてしまい。

具体的な言及は避けますが、普通に観ていて違和感を感じる展開だったので、事件の当事者であればなおさら引っかかるはずなんですよ。

そこをスルーして先に進めるのはちょっと…ご都合主義というか、結局「こういう話にしたかったので」感が拭えません。

そこがすごく残念でした。



それと一つすごく気になったのが、主人公がまったく謝らない点。

問い詰めて勘違いだったとか、強硬手段に訴えたりとかしても、「すまん」の一言すら出てこないという。

これがものすごく嫌でしたね。事件的に仕方ないとは言え、疑心暗鬼の塊でなおかつ謝らないという。

そのせいで主人公に感情移入できないし、好きになれないので最後まで観ても「ふーん」って感じになっちゃう。

結末を考えると、なんでこんな嫌な人間に描いたのかがよくわかりません。

向こうじゃこれが普通なのかなぁ。男性像的に。



ただ事前に見ていたネット上の酷評からすると全然マシだったなというのが正直なところで、

その僕が引っかかったある一点を除けば、それなりにしっかりとした良い映画だったんじゃないかなと思います。

それだけに「あそこをスルー」したのが意味わからないんですけどね。

とても惜しい映画でしたね…。



「惜しい映画」ってしょっちゅう言ってるけどね…。



【このシーンがいいぜ!】

オープニングで隠れてた子どもたちが出てくる時の笑顔が最高。ルナかわいい。かわいかった頃()のアビゲイル・ブレスリンっぽい。



【ココが○】

短めの尺で無理に話を広げていない点。

ホント、言うほど悪くない映画だと思います。



【ココが×】

ただまあそんなわけでね。ある一点に目を瞑って進むのがどうしても解せなかったです。

「そこはいいからとりあえず話進めようぜ!」感がハンパない。



【MVA】

特にビシっと「この人だ!」っていうのはいなかったんですが、消去法的に。



オズバルド・サントロ(ロサレス警視役)



マンションの住人の警視。ハゲ。

ハゲた爺さんの存在感は万国共通です。引き締まります。




映画レビュー684 『ストリート・オブ・ファイヤー』

本日はBS録画から。

「午前十時の映画祭」上映作品の一つ。

もうあれも結構前の企画ですが、未だに観ていない映画はちょくちょくチェックするようにはしています。



ストリート・オブ・ファイヤー
Streets of Fire
監督ウォルター・ヒル
脚本ウォルター・ヒル
ラリー・グロス
出演マイケル・パレ
ダイアン・レイン
ウィレム・デフォー
エイミー・マディガン
音楽ライ・クーダー
主題歌ザ・フィックス
『Deeper And Deeper』
製作国アメリカ
公開1984年6月1日 アメリカ
上映時間93分
ストリート・オブ・ファイヤー











【あらすじ】

人気ロック歌手・エレンが地元に凱旋、大盛り上がりのライブ最中にさらわれてしまう。

姉から事件を聞いたエレンの元カレで札付きのワル、トムは地元に舞い戻り、

エレンのマネージャーで現カレのビリーに「金払えば助けてやるよ」と交渉、

そのビリーと偶然知り合った女兵士マッコイを連れてエレン救出に向かう。



【総評】★★★★★★★★☆☆(★8)


めっちゃテンポが良くて今でも観やすい。


公開当時、「西部劇を現代風にアレンジしたロックアクション映画」という触れ込みだったそうです。

わかりそうでよくわからないという。

でも確かに流れとしては、昔の恋人がさらわれる→仲間を連れて助けに行く→その後のアレコレもそれっぽいのは事実でした。

ただ、西部劇が現代劇にどうこうとかよりも、とにかくテンポの良いつなぎ方が気持ちよくてですね。

もう笑っちゃうぐらいにサクサク進む感じが「96時間」を彷彿とさせるような潔さもあって、見た目は古いんだけど編集としては全然古さを感じないというか。

もう悪役のウィレム・デフォーの髪型とか衣装とかホント笑っちゃうんですけどね。古いな、って。なに? 魚屋さんなの? みたいな。

でももうそんなのお構いなしに振り切っちゃってて今でも全然カッコイイし本当に面白かった。



お話おさらい。

舞台はリッチモンドという架空の街。高架で覆い尽くされていてセット感満載です。

で、そこの出身で今は人気ロック歌手となったエレンが地元に帰って凱旋ライブをやっていたんですが、

そのライブの最中にウィレム・デフォー演じるレイヴェン率いるストリートギャング“ボンバーズ”が彼女を拉致して連れ去っていきます。

そのことを姉から聞いたエレンの元カレ・トムが離れていた地元に戻り、そこでたまたま知り合った女兵士マッコイを相棒に、

そしてエレンの現カレであるマネージャーのビリーを道案内役に指定して彼女を救出に向かう、というお話。



主人公のトムはイケメンなんですがどうやらかなりのワルのようで、ケンカめっちゃ強いんですよ。

ストリートギャングなんぞなんぼのもんじゃい、ということで恐れること無く救いに行くんですが、

そこに職にあぶれた女兵士マッコイが「アタイも行くよ」ってなもんで相棒となり、

えらい治安の悪い地域だし土地勘無いとめんどくさそうだな、ってことでボンバーズの地元に詳しいビリーを連れて行く、と。

んでエレンが監禁されている場所に向かうんですが、ここまでおそらく30分も経っていませんでした。確か。

「ほほう、じゃあ救出劇に1時間ぐらい使うのかお手並み拝見だぜ」とか思ってたらもうパパっと助けちゃう、っていう。



もーね、本当にテンポが早くて笑っちゃうんですよ。

救出シーンなんて見所だと思うじゃないですか。多分都合2秒とかですよ。パッパッパッで終わり、みたいな。

すげーな、思わせぶりさゼロだな、っていう。

結局はそれ以降のアレコレが中心になってくるわけですが…その辺は観ていただくとして。



話の内容としてはベタだし正直うっすいんですが、そんなわけでめっちゃテンポが良いので今でも全然観られるのがまずイイです。

気持ちいいぐらいサクサク進むので、眠くなってる暇もない、みたいな。

あとお話的に現代では結構考えられないような部分もチラホラあって、女殴って守る価値観とか頼りない公権力とか、

結構今やったら物議を醸しそうな部分も含めて80年代らしい、良い意味での古さも良かったです。

※女殴るのが良い、って話じゃないよ

これはおそらく公開から30年以上経ったから逆にイイぜみたいな気がしますね。

多分10年とか15年ぐらいだとギャップでイマイチに感じそうな雰囲気。



相棒が女兵士、っていうのもポイントかなと思います。これで普通の男が相棒のバディモノになってたら全然面白くなかったと思う。

あとビリーが蝶ネクタイでいかにも弱そうなくせに終始強気なのも笑えてグッド。

あの外見であの言動は笑う。なかなか今時観られないキャラで良かった。



これまた良い意味で古さを感じる80年代ロックもすごくかっこよかったし、テンポの良さと音楽で一気に観られちゃう勢いの良さが気持ちいい映画でした。

特に音楽はマジでサントラ欲しくなったぐらい良かった。

曲も日本でカバーされてたりもするので知ってる人も多いと思います。「おお、この曲か!」っていう。

ただ歌詞(訳詞)が各曲「とにかくスピードが大事」「本物のいい男」「若さで突っ走ろう」の連呼だったりするので非常に笑えます。

バカっぽい歌詞なのがまた最高でした。



絵も音も古い、でもカッコイイし面白いというなかなかレアな昔の映画だと思います。

潔く振り切って作れば古くなっても面白いんだなーと感動。

印象的には「マッドマックス」に近い感じかな?

世界観がすごいファイナルファイトっぽいなと思ってたら、案の定ファイナルファイトはこの映画の影響を受けているそうです。

そういや主人公の名前、コーディだったもんなー。(トムのフルネームはトム・コーディ)

顔もなんとなく似てたし。



何はともあれほんとーに薄い話ですが、観やすいし良作だと思います。



【このシーンがいいぜ!】

やっぱりオープニング&エンディングのステージかなー。すごく良かったです。エレキドラムに時代を感じつつも、熱量みたいなものに圧倒されました。



【ココが○】

やっぱりテンポの良さが一番でしょうか。

特にオープニングから中盤ぐらいまではかなりテンポが速く、一気に世界に入れる感じがすごく良かった。



【ココが×】

話の薄さは如何ともしがたい面はあります。

面白いんですが、深さはゼロなので頭空っぽ系の映画ではあります。そこが良くもあるんですが。



【MVA】

主演のマイケル・パレは結構なイケメンだったんですが、初めて聞いたぐらいなのでその後はそんなに売れなかったんでしょうか。

でも役には合ってた気がします。

ウィレムさんの衣装&髪型に後ろ髪を引かれつつ、この人かなー。



エイミー・マディガン(マッコイ役)



クールな女兵士役。

上に書いた通り、これが普通の男だったら全然面白くなかった気がするので、殊勲賞かなと。

全然キャラ違いますが、フィールド・オブ・ドリームスの奥さん役の方でした。



あとビリー役のリック・モラニスも小物感が出ててとても良かったと思います。




映画レビュー683 『パワー・ゲーム』

今日はネトフリより。

なんで観たいと思ってたのかすっかり忘れましたが、観たいと思ってたので観ました。(そのまま



パワー・ゲーム
Paranoia
監督ロバート・ルケティック
脚本ジェイソン・ホール
バリー・L・レヴィ
原作ジョゼフ・フィンダー
『侵入社員』
出演リアム・ヘムズワース
ゲイリー・オールドマン
アンバー・ハード
ハリソン・フォード
ルーカス・ティル
エンベス・デイヴィッツ
ジュリアン・マクマホン
ジョシュ・ホロウェイ
リチャード・ドレイファス
音楽ジャンキー・XL
製作国アメリカ
公開2013年8月16日 アメリカ
上映時間106分
パワーゲーム
















【あらすじ】

大手IT企業「ワイアット社」に勤める若手社員アダムは、社長の目の前で行う勝負のプレゼンの際に

社長に反発してしまい、チーム全員クビとなってしまう。

アダムは腹いせに出社最終日に経費で高級クラブで飲もうとチームメンバーを誘い、

いい女もお持ち帰りで大満足したものの即座に社長に捕まり、不正を咎められる。

警察に突きつけられたくなければライバル企業の「アイコン社」に潜入して開発中の新スマホの秘密を持ち帰れ、

と脅されたアダムは、やむなく違法である“産業スパイ”を始めるが…。



【総評】★★★★★★☆☆☆☆(★6)


終盤まではそれなりだけど、ラストがご都合ファンタジー。


しのぎを削る大手IT企業(というかスマホメーカー)2社の産業スパイをやらされる男のお話。

やっぱりこのご時世、こういう話は実際にあるんだろうし、テーマとしては非常にそそられるお話だったんですが…。



主人公のアダムは大手IT企業「ワイアット社」に勤め、成功を夢見る青年。

しかしなかなか昇進のチャンスはない…ところに社長に直接プレゼンできる機会が訪れ、

ここが勝負だとチームメンバーと気合いを入れて向かいます。

が、プレゼン中の社長の態度に反発し「あんたは何もわかってない」と食って掛かったことでゲームセット、

チームメンバー共々クビを宣告されます。

確かに生意気だったかもしれないけど一気にクビとはすげー会社だぜ。

でももう決まっちゃったもんはしょうがない、落ち込んでてもしょうがないから腹いせに最後に経費で豪遊してやろうぜ、

と高級クラブにメンバーを連れ出して飲んで食って踊って抱いてのフルコースで大満足、

さぁ今日からまた職探し頑張るか…と思ったところに社長からの使者がやってきて、

「てめぇ昨日会社の金で豪遊しやがったな?」と問い詰められます。

額にして1万ドル以上だったので、その異常さがわかるというもの。

最初はシラを切っていたアダムも即座に白旗、

「捕まりたくなかったらライバル社に潜入して機密情報を持って来い」ということで

産業スパイとしての生活をスタートする…という物語です。



ワイアット社の社長はゲイリー・オールドマン演じるニック。

彼は元々、アダムが潜入することになる「アイコン社」の社長・ゴダードの右腕として頭角を現した人物で、

二人は袂を分かってライバル企業となった、という経緯があります。

ちなみにゴダードを演じるのはハリソン・フォード、なんとビックリ坊主でした。

アイコン社は今まさに世界が驚愕する新機種の開発真っ最中で、

その情報が喉から手が出るほど欲しいニック社長がアダムを刺客として送り込むわけです。

無事アイコン社に幹部待遇で転職したアダムは、ニックが用意した豪邸で暮らし、さらに例の晩にお持ち帰りした美女が

アイコン社の広報担当幹部だったということでお近づきになって仕事的にも下半身的にも順調そのもの。

逮捕直前からまさかの成功者としての生活を満喫する日々を送りますが、しかし…とこれ以降は割愛。



まずお話としては、大体読めるもののそれなりに緊張感もあって、

思ったよりもしっかり飽きずに観られたのは良かった点。

脇を固めるゲイリー・オールドマンやハリソン・フォードの存在感もあり、

また最近の映画らしい底上げされたモロモロの演出のおかげで意外と惹きつけてくれる感じがありました。

イーグル・アイ」に似た監視社会を描いている点が今っぽいテーマと言えるかもしれません。

こういう映画を観ては「嫌だわー怖いわねぇ」と言いつつ

街中には監視カメラをもっと増やせとか言っちゃう日本人のダブスタ感が忍ばれます。



ただ不満が結構ありまして。

まず主人公がボンクラなのが気になった。

野心家で能力のある人物として描かれている割にいろいろ抜けてるしなんだかんだで流されやすいし。

まずあんな状況で会社が用意した豪邸に監視カメラがあると思ってないとか頭お花畑すぎる。

対するヒロインであるアイコン社幹部社員のエマもヌケヌケ。

あれだけの立場ならもっと警戒するもんじゃないのかな…。

罠かと思ったら普通に出し抜かれててこれまたあまり優秀には見えません。

演じる二人がまた普通さをより強く感じさせる雰囲気だったのが残念。

特にエマ役のアンバー・ハードはイマイチだったなー。

なんというか普通のその辺のガールなら合いそうだけど、こういう切れ者の役には向いてない感じがしましたね。

きっとジョニデさんもそう思うでしょう。()



とは言え上に書いた通り、道中はそれなりに飽きずに観られたんですよ。

ただもうオチがね…。一気に強引にまとめてファンタジーにしちゃった感じというか。

もうフォーマット通りの終わり方含め、うんざり感の脳内ゲージが

演技終了後の仮装大賞のように一気に上がっていきました。合格です。

※映画としては不合格



そんなわけでサスペンスとしてはいろいろアラが目立っちゃうのでオススメは出来ません。

エンディングが良ければ全然印象が違った映画のような気がします。



【このシーンがいいぜ!】

お父さんがとても良くてですね。エピローグの1シーン、

「ヒロインかよ!」というような動きがあり、そこがとてもかわいかったです。



【ココが○】

産業スパイってなかなかいいテーマだと思うんですよ。

時代的にはいわゆる007的なスパイよりもリアリティが持たせられるだろうし。

ただその割に殺しとか陳腐な脅しを入れてきちゃってるのが全然ダメなわけですが。



あと「パワー・ゲーム」っていう邦題がどうなの、と。

とは言え原題の「Paranoia」もイマイチピンと来ないのでまあなんでもいいや感もあります。



【ココが×】

とにかくエンディングがもうダメダメ。強引にまとめてファンタジーって夢オチに次ぐ悪手な気がします。

あ、一応書いておきますが、いきなり空飛んじゃったりとかそういうファンタジーじゃなくて、

現実的ではないいかにも創作っぽいまとめ方を「ファンタジー」と称してます。



それと序盤で特に感じましたが、劇伴とか演出で無駄に煽りすぎ。

こういうところで安っぽさが出るからこういうのは本当にやめて欲しい。



【MVA】

演者は主人公とヒロインを除いた脇役陣がなかなか良かったと思います。

ただ、それだけにこの物語ではゲイリー・オールドマンの無駄遣い的な印象は否めず。

そのひたすら嫌な社長だったゲイリー・オールドマンも捨てがたいんですが、

今回一番気になったのはこちらの方。



アンジェラ・サラフィアン(アリソン役)



ニックの秘書的な女性。

なんか引っかかる感じ、存在感がいいなーと思って観てました。アンバー・ハードより綺麗だったし。

アンバー・ハードよりもこういう人こそこういう企業にいそうだと思うんだよなー。ということで適役だったと思います。



あとお父さんのリチャード・ドレイファスもグッドでした。かわいい。




映画レビュー682 『ブルージャスミン』


本日はネトフリより。

結構評判を聞くので観たかったんですが、ウディ・アレン監督の作品とは知りませんでしたよ、

というどうでもいい情報からスタートです。



ブルージャスミン
Blue Jasmine
監督ウディ・アレン
脚本ウディ・アレン
出演ケイト・ブランシェット
アレック・ボールドウィン
ボビー・カナヴェイル
ルイ・C・K
アンドリュー・ダイス・クレイ
サリー・ホーキンス
ピーター・サースガード
マイケル・スタールバーグ
音楽
製作国アメリカ
公開2013年8月23日 アメリカ
上映時間98分
ブルージャスミン













【あらすじ】

ヴィトンのスーツケースを抱え、ファーストクラスでサンフランシスコに降り立った女性・ジャスミン。

セレブ生活を満喫していた彼女だったが、しかし夫は詐欺罪で捕まってしまい、現在彼女は一文無し。

やむなく血のつながっていない妹の家に転がり込み、再起を誓って一人働き始めるが…。



【総評】★★★★★★★★☆☆(★8)


面白いんだけど結構しんどい。


ウディ・アレン監督の作品を観るのは3作目(「マッチポイント」「マジック・イン・ムーンライト」)なんですが、

現状一番面白かったですね。文句なしに楽しめました。

が、楽しめたものの…話が進めば進むほど結構キツイ話だなぁとしんどくなってくる面もあって、

なかなか意地の悪いストーリーだとは思います。

劇伴でかなり軽さを(意図的に?)演出している分、気楽に観られる部分はあるんですが、

でも実際に劇中の登場人物たちの気持ちを考えているとなかなか気楽でいられないお話なので、

楽しいんだけど胃がちょっと痛くなるような、不思議な雰囲気の映画でした。

ちょっと「ヤング≒アダルト」に似てるかもしれない。

それだけリアリティがあって、いろいろ考えちゃう切なさがありました。


ケイト・ブランシェット演じる主役のジャスミンは、

アレック・ボールドウィン演じる(これがまたいやらしいほど似合ってる)実業家で

大金持ちの夫・ハルと幸せに暮らし、まさにセレブ丸出しの超富豪生活を満喫していたものの、

物語開始の時点ではどうやらそのハルは詐欺罪で捕まったとのことで生活が一変してしまい、なんと一文無しに。

あえなくサンフランシスコに暮らす唯一の家族である妹のジンジャーの元に身を寄せ、

なんとか再びいい生活ができるように再起を誓うところから物語はスタート。



と書くとなかなか健気な感じはありますが、あらすじに書いたようにジャスミンは

実際は一文無しのくせに飛行機はファーストクラス、さらにスーツケースはヴィトンで着るものも

(おそらく)ブランドモノの綺麗なドレスで…とちょっと現状にそぐわない身なりの御仁。

アレですね。いわゆる生活の質が落とせないタイプ。

まあそれも仕方ないでしょう、時々差し込まれる「セレブ時代のシーン」を観れば、

そりゃあこんな生活してたらなかなかワレワレ一般市民のような生活にしなさいよ、

と言われてもできるできない以前にそういう生活を理解できない、どうすれば良いのかわからないこともあるんでしょう。

完全にプライドが邪魔してます。妹に対しても愛情はあるものの、やはり人として下に見ていることが端々から伺え、

「早くこんな生活から抜け出してまたいい生活に戻りたい」という欲求が強く見えるお人です。



物語は現在と過去を行き来しながら展開されます。

セレブから没落した現在に、かつてセレブだった頃の姿を振り返る過去。

過去のシーンは基本的に夫が登場するのでわかりやすいんですが、この夫とジャスミンの関係性が徐々に変化していき、

「ジャスミンがセレブ生活を手放すきっかけになった夫の逮捕はなぜ起きたのか」を徐々に解明していくという…

ややサスペンス風な展開の妙もあり、その徐々に明らかになる過去のお話が現在に投影されていく作りがお見事でした。



現在では妹とその彼氏がジャスミンに深く関わってくるんですが、容姿も性格もまるで違う妹が、

ジャスミンには受け入れがたいいかにもDQNっぽい彼氏とイチャコラしたり喧嘩したりして、

ジャスミンと対照的な人生を歩んでいく姿もなかなか考えさせられるものがあり、

より味わいのあるお話にしていたと思います。



彼氏と一緒に暮らすために早くジャスミンには出ていって欲しい妹と、

同じく早く出ていってもっとまともな生活をしたいジャスミン。

しかしなかなかうまくいかない現状に、ジャスミンの残酷な“リアル”が浮かび上がるわけです。キビシー!



劇中、ジャスミンの年齢は明かされませんが、(実子ではないものの)息子の存在と

演じているケイト・ブランシェットの年齢から考えておそらく40代前半から後半辺りでしょう。

しかしジャスミンは大学在学中にハルと結婚してしまったので、

まともな社会人経験も無くいきなりセレブになってしまったため、

急に世間に放り出されてもなかなか適応が難しいわけです。

散々金を持て余して好きに生きてきたほぼ職業経験のない40代女性がいきなり一人で働き始める、

このハードモードたるや想像にがたくないわけで、この辺がまた残酷。

いくら超イージーモードで生きてきたとは言え、いきなりのハードモードはちょっと気の毒。



果たしてジャスミンはハードモードに適応して“人生クリア”なるのか。

とても面白かったです。



【このシーンがいいぜ!】

最終盤ですが、ジャスミンが帰宅した時の焦燥した感じ、すごかったですね。

あそこがやっぱり一番女優魂を感じたというか…。スゴイ。



【ココが○】

超印象論ですが、なんとなく「底辺から這い上がる」「頂点から没落する」お話はよく観ますが、

こういう「没落した人の日常」ってあんまり観る機会がない気がするので、そこがまず新鮮でよかったなと。



あとはこれまた印象論ですが、ウディ・アレン監督の映画って大体短いっぽいんですよね。

ほとんど90分〜100分ぐらいに収まる映画が多いっぽくて。

これがとても素晴らしいと思います。短くて面白い映画っていうのはやっぱりセンスがあるし、現代人に優しい。

もちろん長くて面白い映画もたくさんありますが、そういう映画はもう一度観ようと思ってもなかなか腰が重くなるし、

やっぱり短くて面白いに越したことはないと思うんですよ。

高くてウマイのは当たり前、安くてウマイのが尊い理論と一緒で。



少し前に話題になったネットの無料マンガでその辺も触れている良い作品があったので、勝手にご紹介しておきます。

映画大好きポンポさん

映画好きとしてたまらないイッキ見を誘う作品でした。こちらもオススメ。



【ココが×】

短くていいと言いつつですね、エンディングまで観たら…もうちょい観たかったなぁとも思いました。

もう少し、この後のジャスミンがどうだったのか観たかったな、と。

まあそれだけ感情移入させられたということなんでしょう。



【MVA】

みなさんなかなか芸達者で良かったですね。

アレック・ボールドウィンがもう似合いすぎてて、久々にただの噛ませ犬的じゃない重要な良い役だったと思います。

妹役のサリー・ホーキンスもすごく良かったんですが、でもやっぱりこの人が一番かなぁ。



ケイト・ブランシェット(ジャネット・“ジャスミン”・フランシス役)



セレブ感、落ちぶれ感、隠しきれない美人感にくたびれたオバサン感、全部完璧。さすがでした。

そりゃーアカデミー賞主演女優賞始め各賞総ナメなのも納得です。めちゃくちゃ良かった。

あとごくパソコン教えてあげたくなった。断られそうだけども。




映画レビュー681 『ブラック・レイン』


今日もBS録画から。

日本人にはかなり有名なタイトルだと思いますが、実際のところどんな話かは知らないので観たいぞ、と思ってました。

ちなみに前回映画「テレマークの要塞」の主人公カーク・ダグラスの息子であるマイケル・ダグラスが主人公ですが、

ダグラスつながりはたまたまです。



ブラック・レイン
Black Rain
監督リドリー・スコット
脚本クレイグ・ボロティン
ウォーレン・ルイス
出演マイケル・ダグラス
高倉健
松田優作
アンディ・ガルシア
ケイト・キャプショー
音楽ハンス・ジマー
主題歌グレッグ・オールマン
「I'll be Holding On」
製作国アメリカ
公開1989年9月22日 アメリカ
上映時間125分
ブラック・レイン










【あらすじ】

ニューヨーク市警のニックは、同僚のチャーリーとレストランで昼食中、

目の前で日本のヤクザによる殺人を目の当たりにする。

そのまま追走しなんとか逮捕するが、犯人の佐藤は日本へ引き渡すよう言われてしまう。

憤りつつもチャーリーと二人で大阪まで移送したニックだったが、

引き渡した相手がニセの刑事だったために犯人は逃走、二人もそのまま大阪に残って彼を追うことにする…。



【総評】★★★★★★★★☆☆(★8)


日本が舞台の真っ当なハリウッド映画。


多分世間一般的にもそうだと思うんですが、「ブラック・レイン」と言うと

どうしても「松田優作の遺作」というイメージが強く、実際のところどんな話なのか、そもそも面白いのか、

とかそういう情報ってなかなか入ってこないんですよね。

その上「ハリウッドが作った日本が舞台の映画」というのはどっちかというと(間違った日本観含め)

イロモノ的な印象が強いし、日本が舞台で日本人が出てる=評価が高くなりがちな面もあると思うので、

こりゃ一回自分の目で確かめないとな、と。

で、改めて調べたら監督がリドリー・スコットだったので、こりゃー普通に面白いんじゃないのか、

と観てみたわけですが、実際普通に面白かったよ、というお話です。



オープニングの舞台はニューヨーク。

バイクで若い兄ちゃんを懲らしめるオッサン(マイケル・ダグラス)という、およそ日本的な要素のないスタートですが、

彼が昼食中に松田優作演じるヤクザ・佐藤の殺人を目の当たりにし、逮捕することで結果的に日本行きの切符をゲット、

犯人引き渡しで業務完了、気分転換にエビバデサムライ・スシ・ゲイシャ、

と遊び呆けようかと思いきや渡した相手がニセ刑事ということでやむなく日本に留まり、

再度佐藤を逮捕するぞ、という物語になっております。



もともと激しやすいタイプの性格らしき人物が主人公とは言え、

普通に考えればなぜに他国のヤクザをそこまで執拗に追う必要があるのか…という問題がありそうな感じもしますが、

その辺はうまく段階を踏んで因縁めいたストーリーに仕立て上げてくる辺り、なかなかの試合巧者ぶり。

マイケル・ダグラス的に比較的見慣れた雰囲気のキャラ・ニックと、

その相棒でややヤンキーっぽさがありつつも明るく人懐っこい良い奴のアンディ・ガルシア演じるチャーリー、

そして日本で彼らのサポート(と言う名の監視)役としてあてがわれる高倉健演じる松本警部補と、

松田優作が演じるチンピラ上がりの若手実力派ヤクザ・佐藤という4人が主な登場人物になっています。



僕はてっきり松田優作がゴリゴリ前面に押し出された映画なのかと思っていたのですが全然そんなことはなく、

あくまで主人公はマイケル・ダグラス演じるニック。

そしてその彼をサポートし、やがて同僚のような関係になっていく

健さん演じる松本警部補がもう一人の主人公、という感じ。

そう、日本側の主役はあくまでも健さんで、松田優作は脇役というか敵役です。

ちなみにヒロイン的な役割であのスピルバーグの奥さんであるケイト・キャプショーが出てます。

魔宮の伝説以外で初めてミタヨ。

ちょっと印象的な美人、って感じでなかなか良かったです。



さて舞台は大阪ということで、実際問題僕は行ったことがないのであまり軽率なことは言えませんが、

ただ日本にもちゃんとコーディネーターがいたということもあって、

この時代のハリウッド映画にありがちな「間違った日本像」はあまり見受けられず、

日本人としても割と安心して観られる「日本が舞台の映画」としてあまり他に例がないぐらいの良作ではないでしょうか。

ちなみに日本人は基本的に日本語ですが、健さんはポジション的なものもあってほぼ英語です。

が、これが(日本人が言うのもなんですが)べらぼうにウマイ。

今まで聞いた日本人役者の中でもトップクラスにうまい気がしました。うまいというか、自然というか。

思えば健さんにしても松田優作にしても、映画一本丸々観るのは初めてだったんですが、

まさか健さんがこんなに英語がうまいとはつゆ知らず、正直かなり驚きました。

そんな面も手伝って、めっちゃかっこよかった。マイケル・ダグラスより全然かっこよかったです。



他にヤクザを演じているメンバーもなかなか趣があってですね。

まず機内に登場するニセ刑事がガッツさんですよ。ガッツ石松。まさかブラック・レインに出てたとは。

他にもまんますぎる安岡力也がいたり、若手(?)時代の國村隼がいたり、島木譲二がいたり。

内田裕也も出てます。気付かなかったけど。

そして佐藤の元親分で対立しているヤクザの大物が若山富三郎。懐かしい。勝新のお兄ちゃんですね。



そんなわけで一部「日本語おかしくね?」的な日系人キャストもいましたが、概ね日本人も納得のメンバーで固められ、

聞こえてくる日本語に違和感が(あまり)無かったのも良かったな、と。

なんで日本を舞台にした映画を作ろうと思ったのか、理由のほどはよくわかりませんが、

カネ目当てでいい加減に作ったような印象はまるでなく、

全体的に真っ当で安心して観られる作りだったのがとても良かったです。

変な話、日本が舞台だったり日本人が主役級だったりする映画というのは、

なぜか日本の描写に違和感がある印象が強いので、

そういう面をクリアして、健さん始め日本人キャストもうまく使いながら普通に楽しめる「ハリウッド映画」を作った、

っていうのはなかなか珍しい気もするし、なんだか不思議な感じではありましたね。



肝心の物語自体も、言ってみれば“刑事モノの2時間ドラマ”的な内容ではあるんですが、

うまく人物の魅力を消化しながら関係性の変化を経て結末まで一気に見せてくれる巧みさや、

例えば序盤の“闘牛士”的なチャーリーであったり、暴走族の描写であったりと、

いろいろとしっかり伏線とその回収も仕込まれていて、

ううむさすがリドリー・スコット、きっちり仕上げてきましたねという印象。

今観てもまったく問題のない、古くなっていない映画だと思います。

逆に僕のように変な先入観で観ようとしない人もいると思うので、

そういう人には「ご安心なさい?」と叶恭子ボイスで優しく声をかけてあげたいところです。

面白かったよ!



【このシーンがいいぜ!】

アンディ・ガルシアが歌う場面は熱かったですねぇ〜。健さんの珍しい演技が見られるのも○。

それとやっぱりリドリーつながりで「ブレードランナー」を彷彿とさせるうどん食の場面も外せません。



あとは剣道のシーンが良かったな。ササッと竹刀で首を取りに行く健さんのかっこよさたるや。



【ココが○】

本来は当たり前の話なんですが、やっぱり「日本と日本人を違和感なく」物語に活かしているのは貴重だと思うんですよ。

もちろん全部が全部ちゃんとしていたわけではないですが、でも観ていて余計なことに目が行っちゃって

気が散るようなストレスは無かったので、それだけでも日本舞台のハリウッド映画としては上々でしょう。



【ココが×】

特にこれと言っては無いんですが、あえて言うなら…ニックの本国での不正の話、

扱いの割にそんなに重要じゃない気がしました。

というか、あの程度内容に食い込んでくるなら、エンディングででもチラッと触れるべきじゃないのかな、と。

使いたいのはわかるんですけどね。ただ別に無くても良くね? 的な気持ちもありました。



【MVA】

すげーすげーと話題だった松田優作の演技ですが、確かに強烈ではあったもののやや大げさな気はしました。

時代的なものもあるとは思います。

でもこの映画は絶対この人だと思うなー。



高倉健(松本正博警部補役)



ハリウッド映画でマイケル・ダグラス相手に一歩も引かないどころか上を行くかっこよさと存在感ですよ。

もちろん日本人としての贔屓目もあるんだろうとは思いますが、でも…かっこよかったなぁ。

自然でシュッとしてて。

もっと堅い感じなのかな、と思ってたんですが、柔らかい雰囲気もあったのがすごく良かった。

さすが名実ともに大スターなだけありますね。

ちなみに我が母は結婚前の某百貨店勤務時代にご本人を何度も見かけたそうですが、

「本人見てマジでかっこよかったのは健さんと他2人ぐらいだった」と言ってました。余談。




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