なんかのプロジェクトM

なんのプロジェクトかは不明です。 そして「M」はムラムラの略です。 年中ムラムラ。

ようこそいらっしゃいました。

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映画レビュー界のスラム街と言われる、しがない超個人的映画レビュー兼データベースブログです。

「無知識無教養も恐れず感じたことを正直に書く」ことを信条にしております。

たまに毒を吐きます。

細々と続けながら、ようやく500本を突破しました。

これからもマイペースに増やして行きます。



しょっちゅう映画を観てる人も、たまにしか映画を観ない人でも、

ホンの少しでも参考になれば、この上なく嬉しいです。

コメント・トラックバックも大歓迎。お気軽にドウゾ。






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映画レビュー641 『17歳のカルテ』


えー、私事ですがついに…!





Netflixの契約をしました。(どうでもいい



前にもちらっと書きましたが、こと映画に関しては、今あるいわゆる動画配信サービスはどれも五十歩百歩な印象で、

ハリウッド大作系が多いのであまり期待もしておらず、主目的は海外ドラマで契約したんですが、

とは言えやっぱり映画もいろいろ「観たかったけど借りるほどでもない」ような

旬を逃した映画が結構あったので、これはこれで楽しみという。

なのでしばらくは劇場公開を除き、Netflixからの鑑賞になる予定です。でもたまにBS録画も観ます。



ちなみに、かの有名な映画評論家・町山智浩さんが言っていたことを勝手に意訳したところ、

今のハリウッド(≒アメリカ映画)は中国でウケる大作か、

制作費の少ないアート系など小規模映画の二極化が進んでいて、予算的に中規模の映画が減ってしまい、

そこを埋める形で連続ドラマに意欲のあるスタッフも俳優も流れているような状態らしく、

言ってみれば、一番美味しい“アメリカ映画的な映像作品”が連続ドラマになっている、ようです。

この場合の「中国でウケる」というのは、単純に「中国人が出てくる」とか

「舞台が中国」とかではなく(もちろんそれらも含まれるでしょうが)、

文化的・好み的な意味合いが大きいようで、要は一昔前の「日本人は人情モノ・任侠モノが好き」みたいな

カテゴライズだと思われます。

早い話が、中国向けという市場ニーズを考えず、「作りたいものを作っている」から面白い、というようなことでしょうか。

実際、早速Netflixオリジナルのマーベル「デアデビル」を何話か観ましたが、

これがダークナイト的なシリアスヒーロードラマですごくカッコイイんですよ。大人向け! って感じで。

今から観たいドラマが山ほど出てきちゃってて困ってるんですが、でも最初に観たのは久しぶりの「24」シーズン1という。

何しとんねん、と。

その後どうでしょう観たりしてね。入らなくても一緒じゃん、みたいな。



さて、映画とは関係のない話が長くなりましたが。

今回最初に選んだこちらの映画、元々名作的な噂は聞いていて、いつか観たいとは思ってたんですが、

最初にしてはチョイスが渋すぎないか? という気はしました。

しましたが、この鑑賞翌日に配信終了、という噂を聞きつけたので、焦って観てみたわけです。



17歳のカルテ
Girl, Interrupted
監督ジェームズ・マンゴールド
脚本ジェームズ・マンゴールド
リサ・ルーマー
アンナ・ハミルトン=フェラン
原作スザンナ・ケイセン
『思春期病棟の少女たち』
出演ウィノナ・ライダー
アンジェリーナ・ジョリー
クレア・デュヴァル
ブリタニー・マーフィ
エリザベス・モス
ヴァネッサ・レッドグレイヴ
ウーピー・ゴールドバーグ
音楽マイケル・ダナ
製作国アメリカ
公開1999年12月21日 アメリカ
上映時間127分
17歳のカルテ

















【あらすじ】

ある日、薬物大量摂取による自殺未遂を起こしたスザンナは、親の同意の元、精神科病院に入院させられてしまう。

普通だと思っていた自分とは違う入院患者の面々に馴染めないでいたスザンナだが、

次第に彼女たちとも打ち解け、徐々にそこに自分の居場所を見つけ始める。



【総評】★★★★★★★★★☆(★9)


若かりし女子たちの繊細さが伝わる傑作。


舞台は70年代の精神病棟…ということで、どうしても「カッコーの巣の上で」を思い出させるわけですが、

あちらは男子病棟、こちらは女子病棟が舞台で、そして一番の違いは、この映画は原作者の自伝を元にしている、

つまりはノンフィクションに近い作品ということでしょう。

ウィノナ・ライダー演じる主人公、スザンナ・ケイセンは原作者と同じ名前ということもあって、

原作との違いや、どこまでが創作なのかはわからないものの、ほぼ実際にあったお話なのではないかなと思います。



そんなスザンナは、自殺未遂から「境界性パーソナリティ障害」と診断され、

精神科病院に入院させられてしまうところから物語はスタート。

ちなみに主演であり、この原作に惚れ込んで映画化権を買い取って製作総指揮を務めたウィノナ・ライダーも

同様の経歴を持っていたそうで、まさにうってつけの配役です。

さて、傍から観ていても「普通っぽい」スザンナが精神病棟に放り込まれ、かわいそうな気がしないでもない状況の中、

それでもその中で人間関係を構築し、徐々に成長・変化していくスザンナ他入院患者たちのいろいろを見つめる、

やや重めの人間ドラマでございます。(フワッとした説明



やっぱり「精神科病院」っていうのは、良くも悪くもドラマにしやすい面があると思うんですが、

さすが実体験を元にしたお話らしく、あくどい見せ場とかも無くてですね。とても真っ当なドラマでした。

主役も周りのメンバーも精神病患者とは言え、これはこれで一つの青春映画なのかな、という気もするし。

なんというか…やっぱり登場人物たちの年齢的にも生きるのに一生懸命で、迷いも悩みも抱えてもがきながら、

それでもなんとか自己を見出して未来を作ろうとする、そのエネルギーがとても良く表されている映画でしょう。

若い女性らしい繊細さと危うさ、それをむき出しにする重さ、そしてそれらを包み込むような優しさに溢れた映画で、

ま~ほんとに参っちゃいましたね。キッパリと傑作、名作と言っちゃって差し支えないと思います。



最初から最後まで、終始彼女たちの危うさにハラハラ緊張を強いられ、

(「カッコーの巣の上で」を想像してしまうこともあって)良くない結末ばかりを想像してしまう、

観ていて結構しんどい映画ではあるんですが、しかし良い意味で「カッコーの巣の上で」とは違った物語なので、

そこが引っかかって観られない、というような人も気にせず観たら良いんじゃないかな、

と思いますがそもそも「カッコーの巣の上で」なんて古すぎて観てねーよ、って人も多そうな哀しみ。

あれはあれでとても良い映画なので、セットで観て欲しいとは思うんだけど。



とか言いつつこの映画も1999年の作品なので、もはや古い部類の映画に入ってきます。

アンジーめっちゃ若いし。ギャル好きにはたまらないであろう感じでしたが。

ただ、年代を感じさせない演出の良さもすごく光っていたように思います。

特に序盤の、スザンナの頭の中と現実が交差する切り替えの描写なんかもうキレッキレでしたね。

テンポも悪くなく、途中からグイグイ惹き込まれて集中して観られました。

演出も演技も、そして何より物語もとても良くできています。

男性と女性で感じ方も変わってくる物語かもしれませんが、僕はこの映画から漂う「女子的な危うさ」にやられましたね。

ここまで強く、でも繊細に思春期の女子を描いた映画はなかなか無いように思います。

この手の思春期女子を描いた物語は、とかくカジュアルに寄りすぎる印象があるので、

そういうカジュアル的な要素を廃する意味でも「精神科病院」という舞台はとても良かったのかもしれません。



ただ、精神科というフィルターが強すぎるとただの「メンヘラ女子のこじらせ物語」的な感じになってしまい、

ここまで深くはならないと思うので、この辺りはやっぱり原作者ご自身が経験され、

考えてきたものをダイレクトに物語にしたが故に、地に足の着いたものになったんでしょう。

序盤こそ「精神科病院はやっぱりよくねーな」みたいな見え方もするんですが、

全体的にはそういう病院側を悪とみなす価値観はあまり見られないし、当然ながら患者たちへの偏見を助長するような表現も無いし。

あくまで経験者であり、傍観者ではない人が書いた物語だからこその当事者感というのが名作につながったんだと思います。



そう言えば、スザンナは劇中でも「作家になりたい」って言ってましたね。

それが叶ったんだな、と思うと、それもまたこの映画の後味に大きな清涼感を与えてくれて、涙せずにはいられませんでした。

誰にでもオススメできますが、特に若い子たちに、多感な時期に観て欲しいなぁ…。

とてもとても、とても良かったです。



【このシーンがいいぜ!】

夜中の電球交換のシーン。すごく良かった。なんか泣いた。



後はやっぱり…ベタな展開だけど、わかりきってたけど…「The End Of The World」がかかるシーン。

あの一連の「わかってるでしょ」的な引っ張り、そしてそこからのウィノナ・ライダーの演技。

素晴らしかったです。

あの場面でのアンジーのセリフもすごく刺さった。そうなんだよ、そうなの。わかる。



ちなみに、この「The End Of The World」、去年買った「パイレーツ・ロック」のサントラに入ってるんですが、

もう聞けないよね。もうね。そりゃあ。

思い出しちゃってね。このシーンを。

でも脳内再生すごいんだよね。この曲。

それだけ衝撃的なシーンだった、ということでしょう。



【ココが○】

演技、演出、結末含めた物語、全部素晴らしかったです。



【ココが×】

★10にしようか悩むほど良かったんですが、やっぱり少し…重いんですよね。

★10はもう手放しで「ウヒョーーー!!! フゥーーー!!!!」ってなっちゃう感じ(どんな)なので、

そんなテンションは持てなかったというか…。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」に似てる感じ。あそこまで重くはないですが。



あとね、もうやっぱり今年も(古い映画ですが)これを言い続けることになるのか、とウンザリなんですが、

まぁ邦題がクソですね。劇中、17歳って一度も出てこないんですよ。多分誰も17歳じゃないし。

当時の(日本の)社会背景から付けたネーミングのようですが、原作冒涜にも程がある。

邦題付けたやつのカルテが見たい。むしろ。



【MVA】

「デイジー役の子(ブリタニー・マーフィ)、今いい女になってそうだなー」と思って観てたんですが、

すでにお亡くなりになってました…。まだまだ若かったのに、残念です。



さて、わかっちゃいたんですが、ざっと世の中のレビューを拝見したところ

もう九分九厘「アンジーすげぇ!! ウィノナ・ライダー食っちゃってる!!」なんですよね。

いや、わかりますよ。確かにアンジーすごく良かったです。

強くて、繊細で。その繊細さを見せつけるシーンも素晴らしかったので。

ただ、ウィノナ・ライダー自身が言っていたように、確かにあの役なら誰がやっても(うまければ)評価はされる、

美味しい役ではあると思うんですよね。当事者が言っちゃうのはちょっとカッコ悪いですが。

ということで、僕は天邪鬼だからかもしれませんが、断然!! この方だと思いました。



ウィノナ・ライダー(スザンナ・ケイセン役)



アンジーと比べれば、確かに地味でわかりにくい面はあったと思います。

が、僕はもう最初っからこの人の危うさにハラハラしっぱなしだったんですよね。

ベリーショートでボーイッシュな外見も相まって気丈そうだし、普通そうだからくじけなそう…に見えるんですが、

でもなんか危うい雰囲気があるんですよ。言うなればガラス細工感。

すぐ壊れそうな感じがしたんですよね。すごく綺麗だった彼女の当時の外見も手伝って、より儚げなのが余計に。

不安感が露出している演技がすごく良いな、と。

で、ラストはそれがすっかり無くなってて、迷いのない強い女子の目になってたのを見て、

ウィノナ・ライダーすげぇな、立派な演技だな、と感心しきったわけです。



上に挙げた、「The End Of The World」がかかるシーンでの演技もめちゃくちゃ心を打たれたし、

普通なようでとても素晴らしい演技をしていたと思います。マジで。

アンジーも良かったけど、彼女が目立ちすぎて「ウィノナ・ライダーダメだね」は気の毒で仕方ない。

こっちの方が役的には絶対難しいと思いますが、満点だったと思いますね。

ここ数年観た中でもトップクラスの演技でしたよ。



あと余談ですが、アンジーが感情をブワッと露わにする終盤のシーン(これまた名演)で、

セブン」のラストのブラピを思い出しました。皮肉ですね。




映画レビュー640 『イーグル・アイ』


BS録画より。

公開時よりまったく記憶にないノーマークの映画ですが、なんとなく録画しておいたのでなんとなく鑑賞。



イーグル・アイ
Eagle Eye
監督D・J・カルーソー
脚本ダン・マクダーモット
ジョン・グレン
トラヴィス・アダム・ライト
ヒラリー・サイツ
原案ダン・マクダーモット
出演シャイア・ラブーフ
ミシェル・モナハン
ビリー・ボブ・ソーントン
ロザリオ・ドーソン
アンソニー・マッキー
音楽ブライアン・タイラー
製作国アメリカ
公開2008年9月26日 アメリカ
上映時間118分
イーグル・アイ












【あらすじ】

コピーショップの店員として働くジェリー。

ある日彼の住むアパートの一室に大量の武器が届き、直後に謎の女から「今すぐ逃げなさい」と電話がかかってくる。

戸惑っている間にFBIに逮捕されたジェリーだが、またも受け取った電話から謎の女の司令が届き、

同様に謎の女に指示されたシングルマザーのレイチェルが運転する車に乗り込み、逃走を図る。



【総評】★★★★★★★☆☆☆(★7)


設定は面白いんだけどいろいろ残念。


なんかこんな感じの見出し、何回も書いてる気がする。でもそういう感じだからしょうがない。

ジャンルとしてはSFサスペンスなんだと思いますが、でもイメージ的にはアクション映画の範疇を出てないかなーという感じ。

設定はとても良いんですけどね。ただ、詰めが甘い感がすごい。

んで、その設定の部分も結構「謎めいてる」のが劇中の引力になっているので、

ネタバレ回避を信条とするココではあまり詳細を書くことも出来ず…難しい。

とりあえず、ちょっと詳しい概要を。



シャイア・ラブーフ演じる主人公のジェリーは、元々優秀な頭のいい青年だったようですが、

今はコピーショップの店員として冴えない日々を送っています。

彼には軍関係の仕事をしている双子の兄がいて、こちらはかなり優秀な人材だった模様ですが、事故でお亡くなりに。

その兄の葬儀の直後に、日常とはかけ離れた出来事に巻き込まれる事件が続発。

都度謎の女性からの電話で指示を受け、また時には駅の掲示板に表示される指示に従いながら、とにかく逃げる逃げる。

同じ頃、シングルマザーのレイチェルも、習っていたトランペットの演奏お披露目のためワシントンに向かった

最愛の息子を(乗ってる電車を脱線させるぞ的な脅しで)人質に取られる形で、これまた謎の女性からの電話を受け、

言われるがままに車に乗り、待っていたところにジェリーがやってきて、一緒に逃げ回ることになります。

果たして二人に指示を出す“謎の女性”の正体は、そしてその狙いは…というようなお話です。



終盤近くまで「なぜこの二人が巻き込まれたのか」「この女は何者なのか」「目的は何なのか」がわからず、

ずーっと死にそうになりながら捕まりそうになりながらの巻き込まれ型サスペンスはなかなか緊張感もスピード感もあり、

「おっ、意外と良い映画だね」てな感じで見せてくれます。

謎が謎のまま、ギリギリまで引っ張って引っ張ってーのサスペンスっぷりは悪くないです。

ただ、まずその逃げ続けるシークエンスが少し長いのでやっぱり飽きてきちゃうのと、

オマージュなんでしょうが「昔こんなような映画あったよなー」みたいなシーンも結構多く、

既視感のある流れにただひたすら逃げるだけで目的がわからない状態に段々飽きてきちゃうんですよね。

で、話の全貌がわかってきて「おお、そういう話か」ってそれ自体はなかなか好みだったんですが、

そこからがまた少し強引な感じで。

謎の女の正体がわかるまでは無理がなかった展開も、仕掛けが見えてきた後はアラが見えちゃうというか。

「だったらこうすりゃいいじゃん」とか「急になんか必死になってきたなこいつ」とか「えー結局それ?」とか、

いろいろと残念ポイントが出てきてしまい、少し詰めが甘いんじゃないんですかね、という。



ネタバレにならない程度に書くと、この映画に限らず一般論として、敵が強大であれば強大であるほど、

賢ければ賢いほど、「じゃあこれこうするのおかしいよね?」って気になるじゃないですか。

スゴイ敵を描こうとすればするほど隙を作れないジレンマがあるのがこの手のお話の辛いところで、

ましてやこの映画の“敵”は、普通に考えて、いくら優秀だったとしても、

その辺の普通のコピーショップの兄ちゃん(その他)が抗えるような相手じゃないんですよね。

いや、そんなこと言ったら元も子もないのはわかってるんですが、ただそんな兄ちゃんが敵を出し抜いたと思わせるには

いろいろと少しお粗末な気がして、そこがとても惜しい映画だな、と思うわけです。



テーマ自体はそれこそ(タイトルを書いた時点でわかっちゃうレベルで)かなり昔から描かれている、古いテーマではあるんですが、

しかし今なおリアル社会でも議論が行われるようなリアリティのあるホットなテーマでもあるし、

現在の(と言っても10年近く前の映画ですが)テクノロジーでそれを描くこと自体はとても良いし、

実際かなり好きな話ではあるんですが、それだけにどうしても厳し目にいろいろ見ちゃう部分があって、

もう少し神経を張り巡らせた、ギチギチにキツい話にしてほしかったな、という残念感が強かったです。

総じて“この頃の娯楽映画”から抜け出せてない雰囲気があったし、良くも悪くもハリウッドだな、という感じで、

もう一つ、完成度を高めるためのピースが足りていない印象が強い映画でした。本当に惜しい。

まあ、暇つぶしに観る分には良いと思います。



【このシーンがいいぜ!】

アクションはなかなかの迫力がありました。

特に序盤の廃車工場(?)は良かったかな。



【ココが○】

テーマが良いですね。

SFとしてはド定番ですが、それでも良いのは今の時代になってよりリアリティを感じられるからなんでしょう。

実際にこういう話もありそうだ、と思わせる時代になってきたんでしょうね。



【ココが×】

上に書いた通り、詰めが甘いところ。

特にロザリオ・ドーソンがアレするところなんてね…。

こっちは最初っからそれしかないだろ、と思ってたんですけど…。

これまた“ピンチを演出するための無駄なイロイロ”感があって嫌。



【MVA】

多分、ピークに近い時代のミシェル・モナハンだと思うんですが、思いの外普通のオバちゃんという哀しみ。

シャイア・ラブーフもあまり好きではなく…ベタですがこの人かなー。



ビリー・ボブ・ソーントン(トーマス・モーガンFBI捜査官役)



まーこのお方は名脇役の一人だと思うので、そりゃ良いわね、という。

あと“謎の女性”をジュリアン・ムーアがやってるんですが、これがまたよかった。

正体は…観てのお楽しみ。




映画レビュー639 『がんばれ!ベアーズ』


久々「午前十時の映画祭」上映作品。BSでやっていたので録画して観ました。



がんばれ!ベアーズ
The Bad News Bears
監督マイケル・リッチー
脚本ビル・ランカスター
出演ウォルター・マッソー
テイタム・オニール
ヴィック・モロー
ジャッキー・アール・ヘイリー
音楽ジェリー・フィールディング
製作国アメリカ
公 開1976年4月7日 アメリカ
上映時間102分
がんばれ!ベアーズ









【あらすじ】

弱小少年野球チーム「ベアーズ」の監督としてやってきた、元マイナーリーグピッチャーのバターメイカー。

引き受けたは良いものの問題児揃いで超弱小、開幕戦は26対0で試合放棄。

チーム解散を言い渡されたバターメイカーだったが、なんとかしてチームを立て直そうと、ある少女を連れてくる。



【総評】★★★★★★★★☆☆(★8)


ダメ人間揃いなのが最高。


一応ジャンルの上ではコメディ映画とされていますが、そこまでベッタベタなコメディという感じではなく、

この時代(70年代)に多かった(気がする)、子役中心の軽快なコメディタッチの人間ドラマという感じでしょうか。

スポーツが題材らしい爽やかさもあって、いかにも懐かしい雰囲気。

主役となる元ヤンキース(だけどマイナーリーガー)のバターメイカーを演じるのは、往年の名俳優ウォルター・マッソー。

そして彼がチーム立て直しのために連れてきた「速球とナックルボールを操る少女」が、

あの名作「ペーパー・ムーン」で今なお(多分)アカデミー賞最年少受賞記録を持つ天才子役、テイタム・オニール。

古い映画好き(要はおれだぜ)にとってはこれだけでたまらないキャスティングなわけですが、

さらにこの映画でブレイクするも長い間停滞し、「ウォッチメン」で復活を果たしたジャッキー・アール・ヘイリーと、

映画好きとしてはキャスティングだけでもなかなか楽しめる映画でございます。



「マイナーリーガーとは言え元プロ野球選手、野球を教えるにはうってつけだろ」と簡単な気持ちで…かはわかりませんが、

弱小少年野球チーム「ベアーズ」の監督に連れてこられた男、バターメイカー。

彼は彼でもう見るからにアル中の飲んだくれ、常に酒かタバコが口を支配しているというなかなかの御仁。

おまけに子供相手でも普通にキレるってことで結構なダメ人間です。

チームメンバーも子供とは言え曲者ぞろいで、すぐキレる喧嘩っ早いやつもいれば、

練習中もチョコレートを食い続け、やめろと言われればこれまたキレる困ったキャッチャーもいるし、

おまけに英語がわからないスペイン人の子供も2人。さらにいじめられっ子もいれば、黒人少年もいます。



そう、彼らは言わばマイノリティの子供たちで、リーグで一番強いと言われる(少年)ヤンキースの全員白人とは好対照。

そんな彼らが、歴史的な敗退からチームを立て直し、やがてリーグを席巻していく様を描く映画です。



ただ、そうは言っても彼らはずっとさしてうまくならず、足手まといは足手まといのまま、

助っ人のおかげでなんとかリーグを戦えるようになるというような状況なので、

「努力に次ぐ努力で強くなったぜ!」という感じでもなく、至って低速な成長ぶりが逆にリアルで良いですね。

監督のバターメイカーも、「俺はお前たちを強くするためにきっぱり酒をやめるぜ!」なんてことはさっぱりなく、

むしろキレてビール缶を投げつけたりします。ひどい。



そんなわけで子供たちも監督も、特段心を入れ替えてがんばりますというような描写があるわけでもなく、

ただその時に発揮できる力を最大限使って頑張るぞ、ってな雰囲気が良い。リアル。

普通に泣かせに行くなら、急に良い子になったり手を取り合ったりしそうなもんですがそれもなく、

普通に「勝つためにあいつは出さないほうが」みたいな話も出てきちゃう。



ただ、それが良いんですよ。それが良いの。

もうね、バターメイカーはほんとクズなんですよ。

ああ、(映画後の)来期もきっとキレるんだろうな、相変わらず飲酒運転繰り返してダメ人間のままなんだろうな、って。

でもそれが良いんですよ。

人間そうそう変われないですからね。パッと見何一つ変わらないけど、チームへの思いはきっちり積み重なってきて、

それ故にキレもするし、そこに愛が見えるという。



ちょっとだけ、「さっきキレといて今度は理解者アピールかよ」的な雰囲気に違和感が無くもなかったんですが、

でもそれもきっと普通のことで、わざわざ言わないけどキレたことをちょっぴり反省して、

次は違う表現が出てくるんだけど、でもやっぱりまた戻っちゃうんだよね俺ダメ人間だし、

みたいなそういうリアリティがすごく感じられるお話だなーと思いました。



子供も大人も完璧な人間なんていなくて、みんなダメな部分があるわけですよ。

それを直して良いチームにしました勝ちました、じゃ嘘くさいじゃないですか。

ダメ人間のまま頑張って、でも何が大切なのかに気付き始めるっていうのが良いなと思うわけです。



“スポ根”とは対極にある優しいスポーツ映画という感じでしょうか。

同じダメ人間としてはとてもほっこりできる、人間愛を感じる良い映画だと思います。

古い映画ではありますが、短めで割とサクサク進むあっさりさもあって観やすいのも◎。



【このシーンがいいぜ!】

エンディングいいですねー!

はっきり言って展開的にはベタなんですが、良いものは良いです。



【ココが○】

エンディング含め、今となっては方々から炎上しそうなアレコレが描かれる映画なんですが、

それが問題にならないという…その大らかな時代そのものが良いですね。

懐古主義というわけではなく、単純に今はちょっとギスギスしすぎだと思うので、

「まあこういうときぐらい良いじゃない」みたいな大らかな、寛容な時代は素直に羨ましい。

別に電車止まったわけでもないし、線路入ってちょっと写真撮るぐらい良いじゃん…。(タイムリーな話題



あと、タイトルの「がんばれ!ベアーズ」がいいですね。

負けると相手チームがエールの意味で(本人たちはイヤミっぽく)言うセリフなんですが、

この意味合いが最初と最後で違って見えるのがすごく良いなと思いました。



【ココが×】

テンポ重視なのか結構あっさり目なので、もう少し人物描写を観たかったような気はします。

ただそのサラッとした感じも、あざとく泣かせにきてない感じで良い面でもあるんですが。



【MVA】

テイタム・オニールもウォルター・マッソーも良かったんですが、

僕はねー、観ていてこの子がかわいくてかわいくて仕方なかったので、この子にします。



クイン・スミス(ルーパス役)



いじめられっ子。

もーね、女子なんじゃないか、ってぐらいめっちゃかわいいんですよ。この子。

で、いじめられてケチャップ頭からドバーっとかなっても耐えてる様がもうかわいくて健気でもう…。

ちょっとした見せ場もあって、あれはズルい。

鑑賞後にいろいろ調べてみたんですが、どうもその後の活躍は不明なので、

俳優は辞めちゃったのか芽が出なかったのか…残念ですね。

あれだけかわいかったら他の映画に出てきててもおかしくないと思うんだけどなぁ…。




映画レビュー638 『黒い罠』


野暮用まで90分、じゃあ90分の映画でも観るか、とチョイスしましたこちらの映画。

BS録画モノです。



黒い罠
Touch of Evil
監督オーソン・ウェルズ
脚本オーソン・ウェルズ
出演チャールトン・ヘストン
ジャネット・リー
オーソン・ウェルズ
マレーネ・ディートリヒ
音楽ヘンリー・マンシーニ
製作国アメリカ
公開1958年4月23日
上映時間96分
黒い罠












【あらすじ】

アメリカとメキシコの国境付近で、街の有力者が爆殺される事件が起こる。

爆発が起こったはアメリカだったため、アメリカの警察が捜査を始めるが、

しかし実際に犯行が行われたのはメキシコということで、メキシコ人麻薬捜査官のバルガスが捜査への参加を求める。

お互いがお互いを快く思わない中、それぞれの思惑で捜査が進み…。



【総評】★★★★☆☆☆☆☆☆(★4)


まったく楽しめず。


正直、この映画をレビューするべきか、かなり悩みました。

もう本当に久々に、かなりウトウトしてたので。

昼食後に観たのが悪いんですが、ぜんっぜん頭に入ってこなかったし、何一つ面白くなかった。

本来であればもう一度観るべきだと思うんですが、でもその意欲も沸かないぐらいに惹かれるものがない映画で。

もーね、数稼ぎですよ。ぶっちゃけ。

眠いながらも一応観たし、カウントしないともったいないじゃん、ってことで。



アメリカ・メキシコ国境での殺人事件を巡る、両国捜査関係者と陰謀アレコレ。

モノクロ映画です。

監督はオーソン・ウェルズ。

ご存知の通り、今も天才と言われる映画人なので、じゃあ一回観てみようじゃないか、と録画したわけですが…。

なんでだかサッパリわかりませんが、サッパリ惹かれませんでした。

僕はモノクロだとむしろ集中力が増す面があるんですが、今回は本当に見事なまでに落ちましたね。まさに完落ち。

いろいろと(当時の)撮影方法としては画期的なものがあったりして、カルト的な人気を誇る映画らしいんですが、

しかし…眠いながらも観ていたところ、話の筋としてはあまりグッとくるものは無かったように思います。



さすがに時代も時代、もう60年近くも前の映画なので、ありきたりに感じたり、深みがないよってな評価は酷だとは思います。

とは言え、この映画ならではの部分は「国境付近の事件であるが故にアメリカ・メキシコ双方の捜査関係者がイザコザ」

っていう点ぐらいで、そこについても正直言って国籍関係なく「過去に揉めた二人」でも話が通っちゃうんですよね。

国の違いから来る何かが反映されているわけでもなく、ただ対決の構図を作り出すための国の違いで、

あとはそれぞれのパーソナリティにのみ引っ張られる物語なので、別に特段何が良い、っていうのもないよなぁ、という感想。

そこに取って付けたようにノワール感を出すマレーネ・ディートリッヒの無駄遣い感。

惹き込まれなかったせいか、エンディングの余韻を残すための〆もなんだかなぁーという感じで、

終始乗れなかった感がすごかったです。

という中身のないレビューがコチラになります。



いろいろね。

演出としてはね。良かったんだと思うんですよ。

やっぱりモノクロだし、陰影が印象的な映像もあったし。

ただ今の時代に観るには、よほどオーソン・ウェルズに思い入れでもない限りは…しんどいんじゃないかなぁと。



【このシーンがいいぜ!】

オープニングはなかなか今観ても印象的な長回しっぷりで、ここは良かったな、と。

ここの時点ではそこそこ楽しみに観てたんですけどね…。



【ココが○】

これと言って特には…。



【ココが×】

物語のイマイチ感がすべて、ですかねぇ。

一応舞台回し的な存在にバルガスの奥さんがいるんですが、この人がまーゆるくてですね。

舞台回しだから仕方ないんですが、いやそんな無防備じゃダメでしょ、っていう。

そこがまたよろしくなかったのかな、と。



【MVA】

実は最後まで気付いてませんでした、節穴チョイスでこちらの方。



オーソン・ウェルズ(ハンク・クインラン役)



オーソン・ウェルズは「第三の男」(もしくはイングリッシュ・アドベンチャーの広告)のイメージしかなかったので、

まさかこんなに太った中年になっていたとは、とビックリ。

まさに怪演という印象で、酔いどれっぷりなんて本当に強烈な演技だったと思います。




映画レビュー637 『人生スイッチ』


レンタル5本目。

去年、珍しく近場でやっていたので観に行こうと思っていたんですが、行ける日の上映時間が朝8時半からのみで、

フザケンナ休日にそんな早起きしてられっか、と行くのをやめた曰く付きの映画です。

曰く付きなのは自分のせいですごめんなさい。



人生スイッチ
Relatos salvajes
監督ダミアン・ジフロン
脚本ダミアン・ジフロン
出演リカルド・ダリン
オスカル・マルティネス
レオナルド・スバラーリャ
エリカ・リバス
リタ・コルテセ
フリエタ・ジルベルベルグ
ダリオ・グランディネッティ
音楽グスターボ・サンタオラヤ
製作国アルゼンチン・スペイン
公 開2014年8月21日 アルゼンチン
上映時間122分
人生スイッチ












【あらすじ】

人生のある瞬間、“スイッチ”を押してしまった人々のオムニバス。



【総評】★★★★★★★★☆☆(★8)


生きるのこえー!


ごく普通の日々を送る人たちが、ひょんなことから人生の「スイッチ」を押してしまい、不幸になっていくブラックコメディ。

いやぁ、いいですねぇ。趣味の悪さが最高で面白かったです。

なんでも母国アルゼンチンでは、あの「アナ雪」の倍近くヒットしたとのことで、

こんな映画がアナ雪を超えちゃうありのままのアルゼンチンって大丈夫なのか、と思いますね。(褒めてます



昨今珍しいオムニバス(アンソロジー)形式の映画で、全部で6編の短編を約2時間でお届けする内容。

それぞれちょろっとご説明。



“おかえし”

飛行機の離陸前。

モデルのイザベルと、隣りに座った音楽評論家が他愛のない会話を始める。

「元カレは音楽家で…」「ああ、そいつは知ってる。どうしようもないやつだった」

すると他の席にも彼を知っているという人が現れて…。



“おもてなし”

あるロードサイドのレストランに、一人の男が来店する。

彼を見たウェイトレスは狼狽する。なぜなら、彼は彼女の父を死に追いやったマフィアだったのだ。

それを聞いた女主人は、「料理に“ねこいらず”を混ぜれば、心臓麻痺にさせられるよ…」とそそのかし…。



“パンク”

新車に乗った男・ディエゴが長い一本道をドライブ中、トロトロと走るオンボロ車が行く手を阻んでいた。

車線変更して追い抜こうとしても、向こうも道を塞ぐように車線変更をする。

なんとか追い抜いたディエゴは、オンボロ車を運転する男に「このクソ田舎者が!」と罵声を浴びせ、中指を突き立てる。

しかしその少し後、彼の車のタイヤがパンクしてしまい…。



“ヒーローになるために”

工事現場で働くシモン。その日は彼の娘の誕生日だった。

急いでケーキを買い、家に帰ろうとしたところ、ケーキ屋の前に停めた車がレッカー移動されてしまう。

仕方なく車を引き取りに行くと、横柄な態度の係員にお金を取られ、

挙句の果てに自宅に着いた頃には誕生日パーティーは解散直前で娘もふくれっ面。

おまけに後日、シモンが役所に赴くと、違反金としてさらに追加でお金を取られてしまい…。



“愚息”

ある日の夜中、息子が泣きながら父親を起こす。どうやらひき逃げをしてきたらしい。

しかも相手は妊婦で、お腹の赤ちゃんともども亡くなってしまった。

犯人に対する憎悪が日増しに高まっていく中、父親のマウリシオは息子をかばおうとある案を実行に移すが…。



“HAPPY WEDDING”

ある結婚式。ふとしたことから、花嫁のロミーナは、夫のアリエルが出席者の女性と浮気していることを知ってしまう。

取り乱した彼女は式を放り出して屋上へ逃走。

泣いていたところに料理人に慰められて…。



という6話からなっております。

書いといてなんですが、どれも短編なだけにそこそこ中身に触れちゃってるんですよね。これ。

まあ、オチが大事なのでそう興を削ぐこともないでしょう、ということでお許しを。



さて、そんな市井の人々の普通の日々に、いかにもありそうな事件が巻き起こり、そこで取った選択による“スイッチ”で

事態はあらぬ方向に…というお話ばかりを集めました、とても趣味の悪いストーリー集でございます。(褒めてます

名付けて「人生スイッチ」。とても良い邦題ですね。ちゃんと観て付けているのがわかります。

ちなみに原題は直訳したところ「野生の物語」。ワイルドですね。

人間、自分の感情の赴くままに生きていくとこうなるよ、というような風刺の意味合いを込めているんでしょうか。



何せ一つ一つが短いので、それぞれに丁寧な感想なんて書けたもんじゃない(即ネタバレしちゃう)わけですが、

なんとなーく全部を観て感じたのは、順番通りに力が入っていってる感じはしました。

最初の“おかえし”はいかにもオープニングっぽく、軽めであっさり終わっていくし、

そこから順々に込み入ってくるような雰囲気がありました。ただ、なんとなくです。適当な感想。

どれも非常に意地の悪いお話で、特に「パンク」とか「ヒーローになるために」なんかは、

自分でもああいう場面に直面してもおかしくないよな、と思うとなかなかに怖かったですね…。

生きるのこえーよ、と。

ただ生きていくだけでも日常に罠がありすぎやしませんか、と。

なるべく謙虚に、感情に流されないで生きていくべきだな、と身震いしながら観ました。



ただ、個人的に、一番最後で一番魅せてくれないといけない“HAPPY WEDDING”が一番くだらねーよ、

と好きになれなかったのが残念。

こういうラストにしたいんだったら、最後は“ヒーローになるために”で良かったと思うんだけどなー。

“HAPPY WEDDING”のエンディング(つまりは映画のラストシーン)がもうどうしようもなくクソな結末で、

「はいはい、はいはい」ってなもんだったので、そこがね。ちょっと引っかかりましたね。

全体的に面白かっただけに。



まあ、ただこれは完全に個人の嗜好の問題なので、そう感じない人も多いだろうし、割とこういうブラックな話が好きな人であれば、

十分に楽しめる2時間ではないでしょうか。

ブラックとは言え、6話に分けられている分ライトでもあるし、とても観やすい映画だと思います。



【このシーンがいいぜ!】

“おもてなし”の女主人のおばちゃんがね。とてもダークで最高なんですよね。

言うことすべてがもうハードでね。笑っちゃいましたね。

あの人の出番、もっと観たかった。



【ココが○】

最初に書いた通り、今となっては非常にレアなオムニバス形式の映画ですが、

まるで星新一のショートショートを読むかのような観やすさとブラックさの塩梅がとても良いですね。

これ、どれか一つを引き伸ばして2時間、じゃ当然きついので、とてもいい作りだと思います。

これを機に、またオムニバス形式の映画が増えれば…面白いかもしれません。


【ココが×】

“HAPPY WEDDING”のエンディングかなー。

あれだけは「しょうもな」感がすごかった。



【MVA】

1話1話が短いので、断然この人! っていうのはあんまりないんですが…この人かな。



リカルド・ダリン(“ヒーローになるために”シモン役)



一番普通の人っぽさが出ててよかったな、と。

結構他人事じゃないトラブルだし。

6話の中では、一番オチの意外性もあったんじゃないでしょうか。




映画レビュー636 『ルーム』


レンタル4本目。

お知り合いからオススメされた映画。

もちろん評判が良いのは知っていたので、観てみたいと思ってました。



ルーム
Room
監督レニー・エイブラハムソン
脚本エマ・ドナヒュー
原作エマ・ドナヒュー
『部屋』
出演ブリー・ラーソン
ジェイコブ・トレンブレイ
ジョアン・アレン
ショーン・ブリジャース
ウィリアム・H・メイシー
音楽スティーヴン・レニックス
製作国カナダ・アイルランド
公開2015年10月16日 アメリカ
上映時間118分
ルーム












【あらすじ】

5歳の男の子・ジャックは、生まれてから今まで、納屋で暮らし、一歩も外に出たことがなかった。

彼のママは「オールド・ニック」と呼ばれる男に7年間納屋に監禁され、その間にジャックを産んでいたのだ。

ある日、永遠に続くかと思われた納屋での生活に耐えきれなくなった“ママ”は、

ジャックとともにある計画を実行に移す。



【総評】★★★★★★☆☆☆☆(★6)


イマイチ入り込めず、好きになれず。


実際にあった「フリッツル事件」という事件を基に書かれた小説が原作の映画で、

最近日本でも結構聞く「監禁事件」の被害者の物語。

主人公である“ママ”のジョイは、7年前に「オールド・ニック」と呼ばれる男に騙されて納屋に監禁され、

以来外には一歩も出られない生活に。5年前には彼の子でもあるジャックを出産。

そのジャックが5歳の誕生日を迎えたところから物語は始まります。

当然ながら、ジャックは生まれてから一度も外に出たことがなく、テレビの中と現実の違いも明確に認識していません。

そんな日常にいよいよ限界を感じたママは、ジャックとともに脱出計画を練って実行する、というお話。



んで、予告編でも出ちゃってることもあって書いちゃいますが、割と序盤に脱出は成功します。

物語の主軸は「いかに脱出するか」ではなく、「脱出後にいかに世間に適応していくか」というお話になっていて、

「まだ見ぬ世界に出ていってワクワク」という感じは無くて、適応できない(二人それぞれ)自分への苛立ちと焦りの中、

それでも頑張って生きていく、というような、「出てからもしんどい」姿をリアルに描いた物語です。



感情表現としてとても繊細な映画になっていて、感情を表に出しはするものの、結構突然ブチ切れたりするため、

そこがリアルでもありつつも、「ええー!?」というような場面も結構見受けられました。

多分、細かい機微をしっかり拾っていかなければ、そういう唐突感を感じてしまうような映画なんでしょう。

軽い気持ちで「泣けるいい話なんでしょ」と適当に観てると全然響かない、かなりの集中力を必要とする映画だった気がします。

もちろん僕も集中して観てはいましたが、どうにも入り込めないというか…。

こんなこと書くと怒られると思うんですが、主人公の二人、ママとジャック、

どちらもそれまでの環境故に仕方がないのはわかりつつも、

観ていて応援したい気持ちになれない、少しイラつく部分があったんですよね。

出るまでは良かったんですよ。がんばれ! って思いました。すごく。

でも出てから、いわばこの映画のメインの部分で、どうしても彼らを愛せなかった。

くどいようですが、過酷な現実から脱出して「世界」に戻ってきたために、

普通の感覚で生きていけないのはよーくわかるんです。

わかるんですが、それでももっと思いやりを持てないものなんだろうか、と思ってしまい。

特にママの方ですね。やっぱり。

お婆ちゃんにキレるところとか腹が立っちゃって。仕方がないとわかりつつも。



それと、これまた誤解を招く意見かもしれませんが、僕は犯人のアレコレをもっと観たかったんですよね。

何故(性的な理由しかないでしょうが)こういう愚行に走り、そして時を経て、二人に対する感情はどういうものだったのか。

もちろん、犯人に同情する余地はまったくないのは百も承知ですが、

一応これは(元の事件があるとは言え)フィクションなわけだし、

彼には彼なりの人生があって、そこを描くことでもっと監禁事件が立体的に観られたんじゃないかな、と思って。

もちろん、同情的に描け、っていう話ではなくて。悪人としても、もっと彼の人となりを描いて欲しかった。

無職になった、とか触れられていただけに、余計に。

ひどいやつなんだけど、でも彼にも当然ながら感情があり、誕生日の話以外にも息子(ジャック)に対する思いが

いろいろとあったはずで、その辺の話をもう少し観たかったな、と。

逆説的ですが、そうすれば、ジャックとママ二人に対する感情移入の度合いもまた違ったように思うんです。

ところが犯人に関しては、二人が脱出した以降はまったく話に上らないので、「単なる悪役」で終わっちゃった印象で、

であればもう脱出するまでは顔すら出さない、ぐらいで良かった気がしたんですよね。

ジャックに情があるかのような描写なんて一切いらないと思う。ああいう使い方であれば。



まあ、僕は結構見方が変なところがあるので、全然アテにならない意見だとは思います。

普通に観てすごく良い映画だと感じるのが“普通”でしょう。

僕はちょっとひねくれちゃったので、イマイチハマらなかったな、という感じで。

子どもがいる人が観たらまた全然違った印象になると思います。

そうではない悲しいオッサンの意見はこうなる、と思って頂ければ。我ながら残念な人ですね。いろいろと。



【このシーンがいいぜ!】

やっぱりジャックが初めて“生空”を見た時の感動ったら無いですよね。あのシーンは最高でした。

あとジャックがお婆ちゃんにアレ言うところね。そりゃ泣けるよね。



【ココが○】

なんだかんだ書いてますが、監禁事件は脱出するまで、がベタなものだと思うんですが、

それ以降を丁寧に描いた、というのは初めて観たし、「解放されれば終わりじゃないんだよ」という

当たり前の事実に気付かせるものとして、とても良いテーマだと思います。



【ココが×】

上に書いた通り、主人公二人に感情移入できなかったこと。

なーんか後半の人物描写が観ていてしんどかったんですよね。

ハードル上げすぎたせいもあるかも。



【MVA】

どーもママ役のブリー・ラーソンが(顔的にも)好きになれなかったので、こちらの方に。



ジェイコブ・トレンブレイ(ジャック役)



本当にあちらの子役は上手ですね…。

腹立つ場面も含めて、良かったと思います。

髪切るとイケメンなのも高ポイント。




映画レビュー635 『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』


さぁさぁ今年初の劇場鑑賞のご紹介タイムがやってまいりましたよぉー。

チョイスしたのはコチラの映画。

一部方面では絶賛されていたので、期待を胸に久しぶりのイオン浦和美園にてレイトショー鑑賞でございます。



アイ・イン・ザ・スカイ
世界一安全な戦場
Eye in the Sky
監督ギャヴィン・フッド
脚本ガイ・ヒバート
出演ヘレン・ミレン
アーロン・ポール
アラン・リックマン
バーカッド・アブディ
イアン・グレン
ジェレミー・ノーサム
音楽ポール・ヘプカー
製作国イギリス
公 開2016年4月8日 イギリス
上映時間102分
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【あらすじ】

英米合同のテロリスト捕獲作戦中、小型ドローンからの映像により、

テロリストたちが今まさに自爆テロを準備していることが判明。

「捕獲をやめて爆撃し、殺害すべきだ」と作戦目的変更を議論し、ついに決行かというその時、

ターゲット近くの路上で少女がパンを売り始め…。



【総評】★★★★★★★★★☆(★9)


めちゃ面白いけど娯楽寄り。


予告編を観て、「ミサイル撃ち込んだら少女が死んじゃうけどどうしよう」で2時間やるのかよ偽善乙、

的な印象を持ちつつ観に行ったんですが、もちろんそこまで善悪云々に偏った話ではなくてですね、

国ごとのしがらみやら法律やら、万国共通「責任取りたくない症候群」のせめぎ合いやら、

軍事・政治両面のサスペンスっぽくありつつも、実は人間風刺なんじゃないかという気もするし、

いろいろと多方面から「判断を迫られる人間たち」についての観察劇としてとても良く出来ていて、

「わしゃ軍とか関係ないしー」というような立場の違いでハナホジってりゃいいよ、というような単純なものではなく、

むしろ「ああ会社とかでもこういう人いるよね」と身近に投影できる意味で、

ほんのり「十二人の怒れる男」に近い印象がありました。

ほんのりと、ね。そこまで似てるわけではないですが、「立場が(常に)人を変えるわけではない」というような、

人間性についての描写という意味で、少しあの映画に近いものがあるな、という感じ。

ちなみに、ご存知昨年他界されてしまいましたスネイプ先生でおなじみ、アラン・リックマンの遺作になります。



ちょっと細かい部分で相違があるかもしれませんが、その辺はウヤムヤにして頂いて以下ご説明。

物語のターゲットは、実在するイスラム過激組織「アル・シャバブ」の重要人物2人。(3人だったかも)

ターゲットは各人が英米どちらかの国の国籍を持っていて、合同作戦を展開する英米両国としては、

基本的には彼らを「捕獲」したい。つまり逮捕して自国で裁判にかけたい。

で、彼らが同じ建物に入ったことが確認され、これほど機が整ったことはない、このチャンスを逃したくない、

と作戦に従事する軍人たちは色めき立ちます。

そんな中、超小型ドローン(コガネムシみたいな虫状のもの。これがもう新鮮でスゴイ)で室内を探ったところ、

今まさに自爆テロの準備をしていた…ということで状況が急変、軍部は「テロの前に殺害するべきだ」と訴えるも、

法的にはどうなのか、(イギリスが判断するので)アメリカは了承するのか、そもそも友好国内への爆撃は戦争行為じゃないのか…

などなどいろんな方向で喧々諤々、そして判断は上へ上へと伝達され、時間もないのにいつになったら実行出来るんじゃボケ!

と現場指揮官のヘレン・ミレンがイライラ…というようなお話です。



少し説明が前後しますが、この「英米合同作戦」は(多分)今のネット社会らしい、

非常に広範囲なシフトを組まれた作戦になっていて、まず指示を出す司令部はイギリス国内の会議室。

場所は忘れましたが、多分ウェストミンスター宮殿内とかじゃないでしょうか。日本で言う官邸みたいなところ。

ここにいるのが、国防相であるイギリス軍のベンソン中将。アラン・リックマンです。

そしてその傍らで政治判断をする、つまり政治的な責任を負う立場の閣外大臣やその他大臣が待機。

で、そこで出た結論をベンソン中将が現場指揮官であるパウエル大佐に指示。この人がヘレン・ミレン。

彼女は軍作戦司令部みたいな、薄暗い場所で働いてます。

ここには作戦の被害状況をシミュレーションする人や、法的問題を精査する担当の人などが待機。

んで、じゃあいざ決行しましょうかね、となった時にパウエル大佐がその指示を伝達する実行部隊は

遠くアメリカのネバダにいて、ここでは(攻撃用)ドローンを操作する人、その補佐としてミサイル発射担当の人が待機。

顔アップが綾瀬はるか似のフィービー・フォックスが舞台に華を添えます。

さらにハワイでは顔認証担当の技官がいて、カメラに写ったテロリストたちが本当にその人なのかどうかを照合します。

そして現場のソマリアにも協力軍が待機。

さらにさらにそのソマリアの最前線、最もテロリストに近い場所で小型ドローンを操る男が、

例の「キャプテン・フィリップス」で海賊のリーダーを演じたバーカッド・アブディという陣容。



長々と書きましたが、これだけいろんな人達が各所で関わる一大作戦なわけですよ。

場所だけでも、会議室、軍司令部、ネバダの基地、ハワイの基地、ソマリアの基地、そして現場と6か所ですからね。

そこで各々が思うところあり、意見を具申しては突っぱねられ、また相談され、挙句の果てに「外相の判断が必要だ」と

今度は出張中の外相に連絡、さらにアメリカの国防長官にも許可を取らねば…とミサイルたらい回しの刑。

全編に渡って至ってシリアスな映画なんですが、もうさすがに途中で笑いましたね。

何も進まねーな、と。

そして既視感がすごい。

そう、あの「シン・ゴジラ」の世界…つまり日本の意思決定とさして変わらないんですよ。

責任を取りたくない人たち、特に“手を汚す”ことのない人たちの判断を忌避する態度、

そして最終的にスイッチを押すことになる軍人の逡巡、いろいろな思いが交錯してまー進まない。



で、それが面白い、という。



そりゃーゴリゴリ判断するカリスマがいてドカーンで終わり、だったらお話にならないので当然なんですが、

ドローンで現場の状況を確認、即座に被害状況のシミュレーションが出て、その結果法的にあーだこーだ、

とまさに今の時代らしい戦争を描いていて、非常に興奮しました。

その最先端の戦争という技術的な側面の面白さに、判断できない人間という永遠の課題が合わさって、

技術に人間が追いついていないような意味合いも見えてくるし、まさに今この時代だからこそ出来る、

今この時代だからこそ“美味しい”映画と言えるんじゃないでしょうか。



ただ、不満がないわけでは無いです。

一つ思ったのは、社会派のようでいて娯楽映画の色が強い部分。

テーマ的にものすごく考えられそうな映画なんじゃないかと思ったんですが、実際はそうでもなくてですね。

結局ウダウダと「やるのかやらないのか」をひたすら緊張感たっぷりに見せてくれる“だけ”の映画なので、

感慨深い何かをお持ち帰りして「やっぱり今の世の中間違ってる」とか熱く思いを胸に秘めるような映画ではないというか。

まあ、それが悪いというわけでもないんですよね。

それだけ観やすく面白くなっているのは間違いないので。

ただ、社会派っぽい雰囲気でありつつ、実態は「軍事サスペンス風娯楽映画」なので、

少しギャップがあったのが肩透かし感というか。



例のアレですよ。おなじみの。

焼肉食べに行ったらうどん屋だった、みたいな。

美味しいうどんだったけどこの焼肉腹どうしてくれんねん、みたいな。



とまあ細かいことを言いつつも、映画としてはひじょーーーーによく出来ていると思います。

何せ軍服着たヘレン・ミレンが主役というビジュアル的にとても地味なので、日本では到底ヒットしなさそうですが、

しかし骨のある映画を観たい向きには素直にオススメできます。

んで上に書いた通り、戦争映画や社会派映画好きというよりは、少し硬派な娯楽映画好きにオススメしたい。

きっとこれからの時代、当分こういう「社会派っぽい娯楽映画」の良作が増えるんじゃないかという気がします。

新年一発目として大満足のチョイスでした。



【このシーンがいいぜ!】

アメリカ国防長官が出て来るシーンでしょうか。

「まーた中国推しかよ」と思って観てましたが、実はアレ、「中国推しのアメリカ」を揶揄したシーンのような気がして。

言い放つ言葉もまさにアメリカ人っぽい感じで、「イギリスは人間的に悩むのにアメリカって…」みたいな、

すごく見えづらいんだけど根っこの方ではバカにしてるぜ的な軽い風刺も感じられました。

ホント、イギリスってアメリカの風刺が好きですよね。そんなイギリスが好きです。



【ココが○】

これは○×両面で、なんですが、テーマの割に非常に観やすい、よく出来た娯楽映画になっていた点。

ある意味ではプロパガンダっぽくもあるんですが、当然そういう匂いはだいぶ感じられないようにしてあるし、

かなり巧妙に娯楽に寄せている点が「一般向けとして」良い点ではないでしょうか。



【ココが×】

同じく、娯楽映画に「なってしまった」点。

いいんですけどね。面白いから。

ただ、これがノンフィクションなら話はまた違ったと思うんですが、フィクションとして観ると…

やっぱり話がいかにもおあつらえ向きだし、なんだかんだ言って「偽善乙」感もあるわけで。

もう一歩、深いところが観たかったかな、と。



【MVA】

コブラ(会議室)にいたオバちゃんがいろんな意味ですごく良かったんですが、

でもラストシーンでやっぱりこの人にしよう、と。



アラン・リックマン(フランク・ベンソン中将役)



劇中の軍トップで、政治と板挟みになる、ある意味中間管理職なお人。

この人の佇まいとあの声はやっぱり貴重だよなぁ、としみじみ。

69歳で他界は若すぎますよね…。

改めて、ご冥福をお祈りします。

でも最後に良い映画を残してくれて、それはそれでとても良い終わりだったのかもしれないな、と思います。




映画レビュー634 『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』


レンタル3本目。

最近やたらアイヒマン関連の映画が出てきた気がするんですが、何かあったんでしょうか。

社会派好きとしては見逃せない一本かな、ということで借りてきました。

今公開されている「アイヒマンを追え!」も観たいんだよなぁ…。当然、埼玉ではやってませんが。



アイヒマン・ショー
/歴史を映した男たち
The Eichmann Show
監督ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
脚本サイモン・ブロック
出演マーティン・フリーマン
アンソニー・ラパーリア
音楽ローラ・ロッシ
製作国イギリス
公 開2015年1月20日 イギリス
上映時間96分
アイヒマンショー









【あらすじ】

元ナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンの「アイヒマン裁判」をテレビ中継しようとした男たち。

しかしその影響の大きさもあってか、スムーズに許可を取ることもできず、脅迫も日常茶飯事。

果たして彼らは実際に放送にこぎつけることはできるのか。



【総評】★★★★★★★☆☆☆(★7)


価値のある良い映画ではあるものの、やや大仰&周辺掘り下げ不足感あり。


アドルフ・アイヒマンと言えば、ご存知「ホロコースト」の中心的役割を担ったナチス親衛隊の一人で、

ユダヤ人からすれば最も忌むべき存在の一人なわけですが、その彼がモサド(イスラエルの諜報機関)に捕まり、

イスラエルで裁判を受けることとなり、その裁判を世界に向けてテレビ中継しよう、と考えたテレビマンたちの戦いを描いた作品です。



詳細は語られませんが、主役であるミルトンはおそらくテレビディレクターの一人で、このプロジェクトではプロデューサー的な役割。

彼は同じくテレビディレクターで、ドキュメンタリーを撮る力量は評価されながらも、

いわゆる“赤狩り”のために業界を干されていた男・レオをディレクターに据えようとするところから物語はスタート。

レオは説得したものの、肝心の撮影許可がまだ下りていないということで、イスラエルの判事たちの説得をしつつ、

さらにはミルトンに「家族含めて皆殺しにするぞ」という脅迫状が届いたり…と前途多難な中、

歴史に残る裁判の日を迎える…というお話になっています。



…とまあそんな感じで、「あの裁判を撮ろうとした男たちがいた」的な予告編とともに紹介されるこの映画、

実際「アイヒマン裁判をテレビ中継した男たち」の物語ではあるんですが、その肝心の彼らのアレコレに関しては、

やや掘り下げ不足で、申し訳程度にトラブルが描かれつつも割とあっさりめに解決、あまり葛藤も試行錯誤も描かれないので、

結局は「アイヒマン裁判」そのもののお話でしか無い、というのがちょっと中途半端かな、という気がしました。

その割に、トラブルに直面した時には若干大げさに煽ってくれるので、

「煽った割にこれか」「この大げさな煽りはむしろ大したことないタイプ」ってな感じで醒めてしまう面もあり、

素材が非常に良いだけに、作りの残念さが目立ってしまっているのが非常に残念に思います。

これねー、クリント・イーストウッドが撮ってたら全然違ってたと思う。

周辺描写はあっさりなのに煽りは大げさ、っていう逆逆の描き方をしているので、ダブルで損しちゃってるのが本当にもったいない。

ただ、言うほど煽りが多いわけでもないので、おそらく気にする人はそんなにいないのかもな、という気はします。



そんなわけで若干厳し目に書きましたが、しかしやはり「アイヒマン裁判」そのものに関しては…すごかったですね。

サブ(ディレクターが指示を出したりする部屋)の映像も差し込まれるものの、基本的には当時テレビ中継で使われた映像に、

イメージを補完するために当時に近い雰囲気で撮影し直した映像を継ぎ足していく形で裁判を描いていきます。

おそらくはこの映画で新しい事実や映像が出てきてたりはしていないと思うので、

多分ナチス関係に詳しい人であれば常識なのかもしれませんが、でもやっぱり実際のホロコーストの一部が映像に残っていて、

それを裁判で上映していたという光景はとにかく驚いたし、おぞましいものでした。

その資料映像が白黒だったのでまだ観られましたが、これカラーだったら絶対観られなかったと思う。

そして当時の映像をそのまま使った生々しい証言に言葉を失い、裁判を見入る人たち。

これはそのまま、この映画を観ている人たちにつながるものでしょう。

「ホロコーストはひどいものだった」と記号的に理解している(つもりの)現代人としては、

いかにそれが残虐で、同じ人間の所業とは思えないほど凄惨なものだったのか、

よりリアリティのあるものとして理解できる、この上ない「ドキュメンタリー」になっていたと思います。



普通のドキュメンタリーだと、やはり演出も無味無臭なものにならざるを得ないし、

物語としての起伏やドラマを作りにくい面がある分、内容のすごさや重要性とは関係なく、

どうしても観づらい、集中しづらい側面が出てくると思います(僕にとっては「アクト・オブ・キリング」がそうでした)が、

それを「裁判を中継しようとしたテレビマン」というフィルターを用意することで、

内容は極力ドキュメンタリーでありつつ、映画として観やすくしている、という点はとても素晴らしいと思います。

誰もが観やすいようにしつつ、「ホロコースト」の衝撃を伝える、というとても大切な役割を担った良い映画と言えるでしょう。



しかし余談ですが、編集なしのいわば生放送でこういう歴史に残る映像を作る、っていうのはとんでもない話ですね。

それ故の「撮り逃し」も出てきたりしますが、当時の本人たちの心労たるや、相当なものがあったでしょう。



そんなわけで、上に書いた通り、「映画として」は不満のある部分が少なくなかったんですが、

その一方「伝わりやすいドキュメンタリー」としてはかなり良い入り口を用意している映画でもあるので、

その価値は映画としての面白さ以上のものがあるでしょう。いろいろな人に観て欲しい一本だと思います。



【このシーンがいいぜ!】

これはもうラストシーンの「語り」でしょうね。

本当にヘイトに染まった人たちに観て欲しい。でもきっと我がことのように受け止められないんだろうな…。

アイヒマンは「普通の人間」であり、上からの指示によって=自分に責任がないという認識で虐殺をしていた、

そこに自分を当てはめた時、果たしてアイヒマンにならずに済むのか…。

非常に重い問いかけだと思います。

むしろ、最近多い「どうせこんな事件○○人がやったに決まってる」と決めつけるネトウヨ的思考を持った人のほうが、

よりヒトラーに近い危険な思想とも言えるわけで、もうちょっと歴史を勉強するなり、

それこそこういう映画を観て己の身を振り返るなりするべきじゃないかと思いますね。

いろんな映画を観てたら、絶対偏見に染まることの危うさに気付くと思うんだけどな…。

残念なものです。



【ココが○】

上記の通り、「知るべきことを知らしめるための作り」として一つフィルターを用意して観やすくしている、

というのはとても大事で、そこがこの映画の一番のポイントでしょう。



【ココが×】

これまた上記の通り、ドラマ部分がやや中途半端な点と、一部直視し難い凄惨な映像がある点。

特に後者は人によってはかなりキツイと思うので、それなりに心して観る必要があるかもしれません。

普通に死体がゴロゴロ転がるように出てきます。本当にモノクロじゃないとかなりしんどい場面。

何せ作り物じゃないですからね。実際の死体、実際の被害者たちの映像なので…。



【MVA】

マーティン・フリーマンは元々童顔のせいでやや甘い印象がありましたが、さすがに40代半ばになって、

だいぶいい味出てきましたね。とても良かったです。

そんなわけで彼にしようかとも思いましたが、こちらの方に。



アンソニー・ラパーリア(レオ・フルヴィッツ役)



テレビ中継ディレクター。

取り憑かれたようにアイヒマンの人間性を映し出そうとするお方。

深みのある良い人物像を演じていたと思います。ブイシー。




映画レビュー633 『ヘイル、シーザー!』


レンタル2本目。

これも観たかったんですが、ただ劇場行くにはちょっと賭けな気がする、

少し外しそうな雰囲気があったのでレンタルまで待ちました。



ヘイル、シーザー!
Hail, Caesar!
監督コーエン兄弟
脚本コーエン兄弟
出演ジョシュ・ブローリン
ジョージ・クルーニー
レイフ・ファインズ
アルデン・エーレンライク
スカーレット・ヨハンソン
チャニング・テイタム
ティルダ・スウィントン
音楽カーター・バーウェル
製作国アメリカ
公 開2016年2月5日
上映時間106分
ヘイル、シーザー










【あらすじ】

1950年代、歴史スペクタクル大作「ヘイル、シーザー!」撮影中に、

ハリウッドの大スター俳優ベアード・ウィットロックが誘拐されてしまう。

スタジオの重役であるエディは事件解決のために奔走するのだが…。



【総評】★★★★★☆☆☆☆☆(★5)


雰囲気映画で豪華役者陣の無駄遣い。


まったくねぇ…。

コーエン兄弟らしいっちゃーらしい気がしましたが、話自体はもうあってないようなもので、

「1950年代のハリウッドスタジオのいろいろ」を誘拐事件も絡めつつ描いた、ちょっと変わったハリウッドの日常、

みたいな感じですかね。うーん。サスペンスを期待してたんですが、全然そういう感じじゃなくて。

つまらなかったわけではないんですが、でもまあ面白くなかったですね。ぶっちゃけ。

それに違いはあるのか、と聞かれると微妙なんですが、ただ一応最後までそれなりに観られたので。

途中すごい眠かったけど。スカヨハのセリフ2つ見逃したのは気付いてたけど。じゃがりこ食って乗り切った。



一応筋としては、大スターとされるベアード・ウィットロック(ジョージ・クルーニー)が誘拐され、

その対応に主人公であるスタジオ重役のエディ(ジョシュ・ブローリン)が追われ、

その間にゴシップ記者(ティルダ・スウィントン)がいろいろ探りを入れ、若手女優(スカーレット・ヨハンソン)がワガママを言い、

ド大根の新人俳優(アイデン・エーレンライク)に頭を抱える監督(レイフ・ファインズ)がいて、

一方ではイケメンマッチョ(チャニング・テイタム)主演のミュージカル映画を撮影していて…

と非常に豪華キャストを無駄に配し、中身のない話をダラダラ進める感じの映画でした。

もーね、ホントに豪華な人たちがこれでもかと出ては来るんですが、

それなりに出番が多いのはジョージ・クルーニーとジョシュ・ブローリンぐらいで、

レイフ・ファインズとかジョナ・ヒルなんてほぼ1シーンですからね。出番。

そういう贅沢使いをしつつ、結局何がやりたかったのかよくわからないという。



当時のハリウッドを皮肉ってる面はいろいろと気が付きましたが、ただおそらくは元ネタもあるんだろうし、

もっとそういう元ネタを直接的に思い浮かぶようであれば、またもう少し面白かったのかもしれません。

そこまでピンとこない僕のような人間からすれば、全体的に「上滑りした映画への愛情」みたいな雰囲気がどうも好きになれず、

斜に構えた「映画って良いでしょ」みたいなスタンスが気に入りませんでした。

映画愛を出したいならもう少しストレートに出して欲しい。

コメディにしても映画賛歌にしても中途半端だった印象で、特段オススメできる映画ではないかな、と思います。

コーエン兄弟対してに愛があるなら観てもいいかもね、という感じ。

やっぱり映画は監督のものであって、役者のものではないな~というのを改めて実感しました。



【このシーンがいいぜ!】

チャニング・テイタムのミュージカルシーンはとても良かったですね。

唐突に本格的なミュージカルを流されて困惑はしましたが。何この時間、って。

全然本編と関係ないんでね…。だからこそ何をしたいのかよくわからん、ってなったんですが。

ただ、その完成度はとても高く、素晴らしかったです。



【ココが○】

とにかく豪華キャストなので、そういう意味での観る楽しみは間違いなくあると思います。

個々の演技はすごく良かったんですよね。

レイフ・ファインズの困惑する監督っぷりとか最高だったし、スカヨハのぶっちゃけ女優っぷりもなかなかレアだし。



【ココが×】

単純に話が面白くないというか…本当に「愛情の上滑り」感がすごかった。



【MVA】

悩みつつこの方でしょうか。



ジョシュ・ブローリン(エディ・マニックス役)



特に変わった感じも無かったんですが、やっぱりこの人は物語の善し悪しとは別に、安定感あっていいですね。

バカっぽいジョージ・クルーニーもレアでしたが、やっぱりジョシュの良さの方が上だったかなー。




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